2月10日に向けて日銀新総裁人事が内定し国会に提示される見込みであるといった記事を公開しましたが、市場のほうはそれよりも早く動いているようで日経新聞が週明け6日東京時間の深夜二時に日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診 政府・与党が最終調整という記事をうったことからオセアニアタイムではドル円が大幅上昇すでに132円台を突き抜けています。
東京タイムに入る前に一旦131円台に下落したものの仲値に向けて再上昇し高値を保っており、これがこの先どうなるのかが非常に大きな関心事となってきています。
あくまで現段階では観測報道なのでこの上げがいつまで維持できるかですが、黒田総裁の意思を受け継ぎ緩和を継続する意向の新総裁が誕生すると円が売られることを明確に示現した相場となっています。
雨宮氏に打診したということはある程度事前の了解はとれているものと考えられますが、万が一固辞された場合でも黒田総裁の政策を継続して受け継ぐ人物が指名されることになるのは間違いなさそうで、ここからの相場の動きが注目されます。
黒田の異次元緩和を10年に渡り見届けてきた側近
中曽宏氏は1953年生まれの69歳で黒田総裁の後任としては決して若くはありませんが、1978年に東京大学経済学部卒、日銀入行した生え抜きの存在です。
1997年の金融危機の際には信用機構課長として対応に当たった経験をもち、危機管理には精通している存在といえるようです。
国際関係統括の理事を経て2013年3月黒田総裁の運営が開始された時期に副総裁に就任しているので、誰よりもこの異次元の金融緩和には詳しい人物といえそうです。
昨年5月のロイターのインタビューでは、大胆な金融政策・機動的な財政政策・成長戦略からなるアベノミクスについて、経済再生の処方箋としては正しいが「特に第一の矢の金融政策に相当負担がかかった」と指摘し、潜在成長力を少しでも引き上げることができれば、賃金が上昇して家計の値上げ許容度が高まり、物価や金利の上昇で「金融政策が正常化できる」と語っており、果たしてどこまでこの緩和政策を継続していくのか、あるいは徐々に修正していくことになるのかどうかに注目が集まります。
雨宮氏は以前から引き受けを辞退しているという話もあり本当に要請に応えることになるのかはまだ判りませんが、すでに最終段階に入ってきているこの時期に打診と言う報道が出ているので、結局引き受けざるを得ない状況なのかもしれません。
市場にここからの動きが気になる状況
為替相場はとりあえず当面円売りシフトとなりそうですが、すでにYCCの維持は無理と見ている海外投機筋が3月の日銀会合にめがけてまた日本国債の売り浴びせを再開した場合、自らの買付オペと共担オペをもってしてもYCCの上限を0.5%に維持できなくなる最悪の事態も考えられ、ここから一か月あまりの相場には相当な注意が必要になりそうです。
民間の金融機関のアナリストの独自分析によればYCCを中止すると口にした途端にFF金利は1%にまですぐに上昇することが予想されており、仮にYCC上限を再度0.75%にまで引き上げるとした場合でもそれを突き抜けて1%に近づいてしまうといったリスクは相当高くなりそうで、緩和を継続するといっても果たして本当にYCCをこれまでどおり制御できるのかどうかに市場の関心が集まります。
昨年10月UKのトラス政権の時には首相自ら凄まじい市場の洗礼を受けて辞任に追い込まれましたが、今回の日銀総裁人事を巡ってはいきなり新総裁就任時に日銀敗北からスタートするといった前代未聞の情けない状況を露呈する可能性もありそうで、目が離せない状況が続きます。
国債金利が制御できなくなってしまうとドル円は一転円高にシフトすることも十分に考えられるので、この日銀総裁人事が絡む日銀の政策動向からは目が離せない状況になりそうです。