日銀が4月5日に公表した営業毎旬報告によりますと今年3月末時点の長期国債保有の増額は33兆188億円に留まり2017年度の49兆4342億円からさらに減少していることが判明しました。これまで年化の国債保有残高の増加は年額80兆円をめどとしてきたわけですが、弾力的に行ってきているのは買い入れではなく買い控えで市場の予測をはるかに超えるカタチでステルステーパリングが延々と進行中であることがわかります。

買わないというよりももう買えない状況か

日銀の国債保有金額は実に昨年度末で459.6兆円にも上っており、発行済み国債1100兆円の半分に達するのも時間の問題となっています。そもそも国内の正確なGDPがいくらなのかすらもよくわからない状況ですが、一応内閣府の発表した数値をもとにしてみても日銀が保有する国債金額はすでにGDPの80%、実際にGDPがもっと小さい場合にはそれ以上の数字になっており、これは米国FRBのGDP21%やECBの41%と比較しても猛烈に大きな金額であることがわかります。

これがMMT理論を支える妙な根拠に使われているとも言えるわけですが、ここからさらに延々と金融緩和をすると言ってみても実際には財政ファイナンスで政府が発行した国債を日銀が直接引き受けることでもしないかぎりは国債ベースでの緩和措置というのは事実上難しくなっていることが顕在化しつつあるわけです。

とくに過去に発行した長期債の場合それなりに金利がついていますからいくら金融機関にプレッシャーをかけてもすべてを手放すことはありません。もはや今のレベルが限界という見方も強まっているわけです。

黒田総裁は追加緩和余地を示唆

日銀の黒田東彦総裁は、景気を下支えするための追加緩和政策について、これ以上緩和の余地がまったくないということはないとの認識を先週のG20 の記者会見の席上で語っていますが、ETFをさらに増額して買う話もすでにかなり限界に近づいていますし、上述のように国債の買い入れもかなり限界に近付いており、数字を大きくする旨政策発表しても実際に買い入れていないことが明らかになればかえってマイナスに働くことも考えられ、ここからの日銀の政策に注目が集まります。

市場では25日の政策決定会合で消費税増税対策を含めてなんらかの緩和措置が飛び出すのではないかといった勝手な期待もではじめていますが、こうした期待が剥落するとまたしても株は失望売りになるものと思われますし、ドル円も連動して下げるきっかけになりかねず、その後に続く史上初の10連休の相場の推移にも影響を与えそうで、かなり注意が必要になりそうな時間帯に入ってきているようです。

日銀の緩和が米国の債券市場を支えているだけに心配

日銀の金融緩和政策とほとんどゼロ金利維持の状況は本邦の金融機関に大きな影響を与えており、より高い収益を求めて海外に目を向ける大手行は海外での貸し出しに走っていることから結果として全体の30%に達しています。さらに本邦の機関投資家はドル建ての資産に大きくシフトしており、とくに米国の債券市場をささえているのは本邦の金融機関の買いが大きいとの指摘もあり、日銀の緩和政策がどこまで続くのかは世界の資本市場にも大きな影響を与えているだけに目が離せない状況です。ステルステーパリングがさらに進めば市場は事実上日銀が出口に向かっていると判断しかねないわけですから、国債の買い付けが密かに減額するというのはかなり大きなリスクになってきていることがわかります。日銀が国債を買えなくなっている、あるいはもう積極的に買わなくなっているというのは日銀の抱える問題のほんの一部にすぎませんが、黒田総裁が常に口にしているほど日銀の政策は盤石ではなくなっているという点には相当注意が必要になってきているようです。