自民党は4月21日投開票の沖縄3区と大阪12区の補欠補欠選挙で手痛い敗北を喫したことから衆参同時選挙を実施せざるを得ないのではという憶測が急激に高まりを見せています。また景気は想像以上に悪化しはじめているようでここへ来て三度目の正直でもはや半年ないこの時点にもかかわらず消費税増税を再度延期するのではないかという見方も非常に強まりをみせています。政治の実際の状況はもっぱらその筋のメディアで情報収集するしかありませんが、本当にこのタイミングで消費増税延期を今の内閣が打ち出した場合、ドル円は一体どう動くことになるのでしょうか。まだ決定ではないもののこの段階でその先行きを予想してみることにしたいと思います。
国債の格下げリスクがにわかに高まる状況に
この国が既に1100兆円にものぼる財政赤字を抱えていることは世界的に周知の事実ですからまたしても増税を先送りした場合は、ほぼ増税凍結に近い印象が醸成されることとなり、日本の格下げが一段と進むリスクを考えなくてはなりません。
2014年の12月にムーディーズが格下げを行ったのも増税延期が影響を与えているとされているわけですが、この時には本来動く方向とは異なる方向に相場が乱高下することとなりました。2014年場合、12月1日にムーディーズが何の予告もなくいきなり日本の格付けを1ノッチ下げたことからまずはアルゴリズムが即座に起動し、ドル円は一気に上昇することとなりましたが、教科書どおりの動きはここまででその後日経平均の先物が下落し始めると一転して売りが加速し、119.15円まで買い上がったドル円は118.700円まで急落を示現することになったのです。
このように国債格下げならドル円は円売りと判でついたような対応を考えると実はほかの要素も絡めて逆にドル円が円高に走ることもあるわけで、こうしたイベントを通過するのはきわめて難しい判断となりそうな状況です。
日米通商交渉はライトハイザー茂木の両氏により進められる模様
先週末日米首脳会談が開催されましたが、トランプ大統領が会談に先立って公開された首脳会談の席上米系メディアの記者から協約の締結時期を聴かれたことに答えて早ければ来日時に署名する可能性もあるといった日本側にとってはまったくの寝耳に水の話をしはじめたことから日本サイドはかなり巻き戻しに苦慮させられることとなったようで、結局安倍総理から短期の締結は難しい旨を再度伝えることで事実上ライトハイザー、茂木大臣の交渉にゆだねることが明らかになりました。
蜜月関係でなんでも安倍・トランプで決められるかのような印象を市場に与えてきた安倍政権ですが、どうやらこの通商問題はそう簡単にいかないことを最初から露呈させることになってしまいました。また当然のことながら為替条項についても今のところ何ら合意に達している部分はなく、これも引き続き懸案事項となりそうで、ドル円は簡単に上方向には上がらない状況です。
日本格下げが起きれば文字通り影響がでるのは国債そのもの
足元の日本の格付けはすでに中国や韓国よりも低いもののなんとかA格を維持しています。しかしここからさらに格下げを食らった場合BBB格レベルも当然視野に入ってくることになります。
BBB格レベルといいますと他の先進主要国を見回すとイタリアと同列ということになり、日本の危機的財政状況が本格的な問題として顕在化してきた場合には簡単に
長期金利上昇幅が3%を超え、企業の資金調達コストに至っては6%超などという驚くべき状況に陥ることもありうるのです。
こうなると日銀が完全に制御できているという長短金利もどうなるか危なくなり日本国債は一気に国際的担保価値を失うことにもなりかねず、なにより金融機関の資金調達にも相当な影響を及ぼすことが考えられます。調達コストの上昇よりは信用収縮のほうを心配すべき状況で、こうしてみますと目先のドル円の上下の問題よりもかなり多方面で深刻な状況を示現するのが格下げ問題ということになります。本来はドル高円安になりやすい格下げ問題ですが、その時々の材料がブレンドされると一旦は円高にシフトすることも考えられ、一筋縄ではいかない相場が示現することをあらかじめ覚悟しておくことも必要なようです。果たして安倍政権はどのように消費税増税を判断することになるのかが注目されます。