4月の後半から国内ではすっかり令和への改元と史上最大の長期連休の話題がかけめぐりほとんど注目されなかったのが中東情勢ですが、ここへ来て状況はかなり緊迫化しつつあるようで、為替取引の視点から見ても相当注意しなくてはならない時間帯に入り込んできているようです。
トランプ大統領はほぼ1年前にイランと米英を中心とした6か国が2015年オバマ政権時代に交わした核合意から離脱を表明し、さらにこの4月末にはイラン産原油の輸入禁止の適用除外を打ち切ると発表しています。この2015年7圧締結した米国を含む6か国とイランの合意は核開発の制限についてトランプは大統領選挙期間中から強く非難しており、一定期間後に解除しているだけで結果的にミサイルの開発を黙認しているにすぎないとオバマの生ぬるいやり口をずっと批判してきている状況です。米国はイランが原油取引や金融取引で獲得した外貨を核開発に使っているとの認識をしていますので、とにかくイランの資金源を根絶やしにしようとしていることは間違いありません。
本当に戦争になるのかどうかはまだ不明の状態
トランプはユダヤ系の支持層やキリスト教の原理主義系の組織からの支持を集めており、政治献金もこの層からが潤沢であることからどうしても支持を維持するためにイランを叩くことが必要となっているという見方も強くなっており、ご本人は決して戦争は好きではないと公言しているようですが、状況次第でイランとの戦闘状態が示現するリスクはかなり高そうです。
足元では米国にはシェールガスが出るようになっていることから石油に対する心配はなんらなくなっているので本来はホルムズ海峡でもめる必要などはないのでしょうが、北朝鮮でも前面に登場したボルトンやイスラエルのネタニヤフがイランとの戦争へと働き掛ける可能性はかなり高く残されていることは間違いなさそうで、それに乗る形になれば大統領就任以来はじめての本格的な戦争参入となる危険性は高くなりそうです。これで困るのは実は日本で、ホルムズ海峡が封鎖されてしまいますと、日本への石油輸出の道が絶たれることになり石油製品価格が大きく上昇することも考えられるところです。
リスク回避の円高も進む可能性
こうなりますと、米中の問題でもリスク回避が進むなか円高にシフトしているわけですが、さらに中東情勢の地政学リスクから円が広範に買われる可能性も高くなりそうで、想定以上にドルに対しても円高が進行してしまう危険性が高まります。
10日に発表されたCMEの5月7日付のIMMのポジションレポートによりますと一旦ドル円の円ショートは減少しはじめていますが、まだ大口投機筋による大量なショートが残っている状況にありますので、これが一気に巻き戻しとなった場合には相当な円高を示現する危険性があり、ここからは中東情勢にも相当注意しながらトレードすることが必要になりそうです。
新元号・令和でご祝儀相場が展開するのではないかといった荒唐無稽な期待が本邦市場では高まりましたが、結果的に見ますと5月に入ってからはまったくこうしたご祝儀相場などが示現する気配は感じられず、むしろリスクとしては認識されていたものの大きなものにはならないと楽観視されていた材料が急激に頭をもたげてきている状況で、こうしたグレーリノと呼ばれるようなあまり注目されていなかった材料が大きく相場を動かすことに相当な注意が必要になりそうです。
ドル円やクロス円は一旦戻りを試すこともありそうですが、レベル感だけで買いを入れていると失敗する可能性も高く、ファンダメンタルズとテクニカルが合致するタイミングをしっかり狙ってエントリーすることが重要な時間帯になりそうです。