中央銀行の政権からの独立性はどこまで保てるものなのか
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7月6日、トルコのエルドアン大統領は、トルコ中銀のチェティンカヤ総裁を更迭し、ウイサル副総裁の昇格を決めています。かねてからエルドアンは利下げを中央銀行に要求してきたものの、それが受け入れられないことから今回更迭に踏み切ったもので、当然トルコリラはこうした事態を嫌気して売られています。

しかし、この話状況は異なりますが、どこかで聞いたことのある話であることを多くの方がお気づきかと思います。それもそのはずここのところ延々と米国のトランプ大統領がパウエルFRB議長を名指しで批判してなぜ利下げを行わないのかとさんざん批判し、公的にクビ切りができないかを検討しているといった報道も飛び出す始末で、実に似たようなことが起きていることがわかります。強権のエルドアンの国だから中央銀行の独立性が侵されるというようなものではなくなっているわけです。

トランプはすでにECBのドラギ総裁を次期議長にしたいと言ってみたり、超ハト派のカシュカリミネアポリス地区連銀総裁を後継に充てるのではないかといった憶測まで飛び交う始末です。

たしかに米国の現状は日本円にして2200兆円に及ぶほどの政府債務を抱えていますから、少しでも金利が低いほうが支払い利息も減少して政権運営がしやすいという点は理解ができます。しかし史上最高値を更新中のS&P500やNYダウの状況を見ますとなぜこの状況で利下げをしなくてはならないのかは従来の経済学では到底理解できない状況に陥っていることもまた事実で、政権が中央銀行に口出しすることが許されれば金融政策はめちゃくちゃになりかねない危機的な状況であることも理解することができます。

トランプの言うことは聞かざるを得ないパウエル

バーナンキ時代にFRBで真っ先にQEをやめるべきだと常に主張してきたのがパウエルですから、足元のこの人物の発言の180度方向転換・緩和再開の意向にはなんらかの圧力がかかったのはほぼ間違いなさそうで、しかも必死に独立性を語ってはいますが結果的に政権意向にぴったり沿った形になってしまって点は見逃すことができません。結局のところ米国でさえも首切りをちらつかされるとトランプの言うことを聞かざるをえない状況であることは市場に相当透けて見える状況となっているのは間違いありません。また株価が下がると結局のところ利上げをやめて緩和に走るしかないFRBの姿勢は完全に市場から株価重視政策であることを読み取られてしまい、足元では過剰とも思えるほどの利下げ期待とその織り込みが進んでしまい、迂闊に市場期待を無視すればまたしても催促相場の株下げに直面しかねない状況になっている点も非常に危惧されるところです。

日本ではすでに政権と一体化している日銀

ところで独立性ということでいいますといかにも独立感が強そうに見える日銀ですが、すでに30年近くゼロ金利を維持し1100兆円にまで膨らんだ国債の発行による金利負担を圧倒的に抑圧することに延々と貢献してきているのが日銀の実態であり今の政権下ではほとんど金融ファイナンスを行っているかのような状況に陥っているのが現状で、拡大しすぎた金融緩和をこの先どうやって終焉させるのかほとんど見当もつかない状態になっていることが気になるところです。

こうしてみますと、ECBはEU圏を統括する中央銀行ですから特定国との結びつきは低いもののそれでも主要国であるドイツの意向には耳を傾けざるを得ないところがあり、どこの中銀も完全無欠の独立性を維持できているわけではないことが透けて見えてくる状況です。またこれまではどちらかといえば経済学に精通した学者に近い存在が総裁を務めてきたわけですが、ECBの次期総裁のラガルドは弁護士で政治家、パウエルも弁護士で経済学の学位は持たない存在で、黒田総裁は単なる役人ですから、もはやどの主要国でも経済金融のエキスパートがかじ取りをする時代が終焉していることがわかります。となるとここからは益々中央銀行が各国の政権との連動性を高めていくことも考えられ、中央銀行の独立性を期待すること自体に無理があるのかも知れません。当然のことながら為替もそれに翻弄される時間が長くなりそうな予感がしてなりません。