ここのところFX市場はとにかくトランプのツイート発言にかき回せられていますが、その陰にかくれて非常に状況が悪化しつつあるのがドイツ経済です。
8月14日にユーロスタットから公表されたユーロ圏の4~6月期のGDP成長率改定値は結局プラス0.2%となりましたが同じタイミングに発表されたドイツの成長率はすでにマイナス0.1%となっており、明らかに中国経済の失速にドイツが大きな影響を受けていることを強く感じさせる結果になっています。
引き続き欧州経済をけん引する役目を果たすのがドイツですからここでドイツがリセッションに陥ることはEU全体に暗い影を落とすことになるのは間違いなく、7~9月のGDPが継続してマイナスに落ち込めば確実にテクニカルリセッションに陥ることになりますからここからのドイツ経済の推移が非常に注目される状況となってきています。

ECBの利下げ、緩和が期待される状況は間違いない

とくにかなり厳しい状況になってきているのが製造業PMIで欧州全体でも50を下回りまったくさえない状況であるのにドイツがさらにそれを先導するかのような形で大きく下落していることが顕著になってきています。こうなるとECBが再度利下げや緩和に動くのはもはや時間の問題ということになり、世界的に低金利が進むのもよく理解できるものがあります。ただECBはすでにマイナス金利を導入していますからこれ以上同じスキームを深堀しても金融機関がすでに生き残れないところまで来ていますからかなり難しいかじ取りになるのは言うまでもありません。

Photo 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190704000285.html

ECBはドラギ総裁が退任し、新たにラガルドIMF専務理事が就任することになるわけですが、この人物は金融に詳しく見えても政治家に過ぎずここから厳しい状況に進んでいくEU経済を金融の面からうまくかじ取りできるのかどうかが非常に気になるところです。

メルケルはすでにレイムダック化

Photo AP https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190712-00000003-yonnana-soci.view-000

ここのところG7などをみても体調不良がたたっているのかメルケル首相が存在感を急激に低めているようですが、そのプレゼンスが下がるのとシンクロするようにドイツ経済が悪化しすでにその存在がレイムダック化しているのは間違いないようです。本来なら強い政治的な指導力が求められるところですが、どうもそうはならない状況のようです。このまま中国経済が米国からの関税をはじめとする猛烈な攻撃にあって沈みこんでいった場合ドイツも道連れになりかねないわけでここからの国を挙げての政策が重要になりそうです。

ドイツ中央銀行は第三四半期に再びドイツ経済がシュリンクすることをすでに想定しているようですが、まだ財政出動による景気刺激は必要ないとみているようですが、リセッション入りはほぼ間違いないようでこのまま放置しておくとさらに悪化する危険性に直面していることがわかります。ドイツ政府はリセッションに至った場合には財政措置を準備しているとの報道も出ていますが、予防的措置で利下げに踏み切る米国とはかなり対応が異なる点が気になるところです。

ユーロドル日足推移

こうした状況からユーロはさらに下落する可能性がでてきていますが、米国トランプ大統領もドル安を志向しているだけに通貨安争いの結果がどうなるのかに関心が集まります。足元ではすでに対ドルで1.1に接近しているユーロですが、2017年につけに行こうとしたようにパリティに向かうのかどうか大きなポイントになりそうで、戻ったら売るという繰り返しでもけっこう利益を確保できそうな動きが延々と続いています。

このように見回してみますと米国以外はかなり景気が顕著に悪くなってきているのはどうやら事実のようでどこがここからの相場の下落をけん引することになるのかについても大きな注目点になりそうです。引き続きドイツ経済の状況には注目していく必要がある時間帯です。