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9月15日サウジアラビアのアブカイク(Abqaiq)とクライス(Khurais)にある2か所の国営石油会社サウジ・アラムコ施設でドローンによるとみられる攻撃がありこれにより同国の原油生産の約50%が生産を停止する事態に追い込まれ、当然のことながら週明けからドル円も下落、米株も先物で下落から始まっています。サウジの原油生産半減は世界の5%相当の停止となることから経済への影響が非常に懸念されるところとなってきています。

現状では、イエメンの反政府武装組織フーシが同日、傘下のテレビ局「アルマシラ」を通して犯行声明を出し、東部アブカイクとクライスにある施設を無人機10機で攻撃したと発表していますが、米国はフーシを支援するイランによる犯行とみており、サウジアラビアの報復行動も支持するような姿勢を見せていることから、今週この問題はかなり大きく発展し米国の出方次第では相場にもかなりの影響を与えることになりそうで、注意が必要となります。サウジアラムコはIPOを検討中で東証での上場もターゲットになっていただけにこの事件でIPOに影響がでるのかどうかにも非常に大きな関心が集まりそうです。

ボルトンが政権を去っても高まる戦争リスク

トランプ政権では軍産複合体の代表格ですぐに戦争をはじめたがるボルトンが辞任する形で政権を去ったことから世界的に戦争リスクがかなり低下したという見方が強まっていましたが、今回の事件でサウジ側の動き次第では中東での戦争リスクがかなり高まるもと思われることからトランプの発言が非常に注目される状況となってきています。基本的に脅かしはしても戦争はしないのがトランプの基本姿勢ですが、サウジアラビアの対応はそれとはまったく別問題ということになりますから、サウジの動向も気になるところです。

サウジアラビアとイランは直接的な軍事衝突はありませんが、これまでシリアやイエメンでの紛争で敵対する勢力が背後から支援してきたことは明らかでこれがここから直接対決ということになると事態は大きく変化することになります。

そもそもこの二国は何を争っているのかというのは我々には今一つよく理解できないわけですが、決定的な問題が起きたのは1979年のイラン革命がきっかけになっていると言われ、1980年のイランイラク戦争ではサウジはイラクを支援する側にまわっています。ただサウジも1990年のイラクによるクウェイト侵攻を受けてイラクの脅威からイランとの関係改善につとめるなど、つねに微妙な関係が継続してきている状況です。米国が中東地域への関与度を低下させてことによりサウジがイランとの対立局面で前面に出ざるを得なくなってきたという背景もあるようです。

石油価格上昇で本当にFRBはここから継続して利下げができるのか

この事件を受けてWTIの原油先物は1991年以来の上昇スピードを見せていますが、これにより消費者物価が上昇するような形になってくると米国はここから先すんなり利下げを行えるのかどうかも気になるところとなります。もちろん自国のシェールオイルを存分に保有する米国ですから石油の影響は直接的には受けない部分も多いものと思われますが、ガソリンなどの価格などは確実に影響を受けることになりますから、FRBのここからの動きにも注意が必要となりそうです。

とにかく、中東情勢の悪化と原油価格の上昇はあらゆる部分で世界経済に影響を与えることは必至の状況ですから、市場の反応について十分な注意が必要になりそうな時間帯となってきています。月初から続いた妙なリスクオン相場も一旦お仕舞になる可能性がでてきています。