2008年のリーマンショックからとうとう丸11年を経過し、ここから先米国の景気がどこまでもつのかが市場では非常に関心を高める話題になっています。先ごろ世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターアソシエイツの最高責任者レイダリオが2019年から2020年までに米国がリセッション入りする確率は25%であると発表して話題になりましたが、終末博士の異名を持つNY大学のルービニ教授はこれよりもさらに確率は高いとして辛辣な内容をブルームバーグのインタビューで口にしています。

Source Bloomberg TV https://www.youtube.com/watch?v=ZWUIu9-StQ8&feature=youtu.be

すでにYouTubeにインタビューの内容が出ていますのでご覧いただければと思いますが、このルービニ教授は2008年にリーマンショックの示現を見事に予測したことから一躍有名になり以来週末博士と呼ばれるようになっています。

景気悪化材料は盛りだくさんと指摘するルービニ教授

このインタビューで、ルービニ教授はかなりの材料を指摘して今年から来年に米国がリセッション入りする確率はレイダリオの指摘する25%よりもはるかに高いと予測しています。世界経済の成長が鈍化しつつある中で米国トランプ政権がしかける対中をはじめとする貿易戦争は景気後退に大きく貢献してしまうことを指摘するとともに、現在若干後ずれしている対中関税の実施が予定通り行われた場合には米国の景気後退の引き金を引くことになると予測しています。ところかこうした状況おを市場は正確に織り込んでおらず、問題はこれから起きるとみているのです。

改善策は金融当局が安易な緩和をやめることと主張するルービニ教授

ルービニ教授はこの状況への解決策を聞かれ、ずばりFRBが緩和措置を講じるのをやめることが最良の対応策であると答えています。リーマンショック以降とにかく中央銀行が率先して過剰とも思える金融緩和を実施してきたことが株価を支えて経済を復活させてきたと思われてきたわけですが、同教授はこのまま緩和策をとれば最終的に財政赤字の拡大に歯止めがかからなくなり、結果的に悪いインフレが起きてそれがさらに加速すると予想しているのです。

確かに完全失業率が実現し、株価も高値を維持し続けているのに大型減税は実施するは、FRBはすでに予防措置をしながら利下げまで行っているわけですから、インフレが起きても全くおかしくはない状況であることは間違いありません。

2008年との違いは企業セクターまわり

2008年の暴落を言い当てた実績から、ルービニ教授は足元の相場と2008年の金融危機前の違いについてインタビュアーから尋ねられていますが、2008年の金融危機前までは問題は銀行システム、ならびに過剰なレバレッジの利用、さらに家計に問題があったものの現状は超低金利を背景としたシャドウバンキングと企業セクター周辺に大きな問題があると指摘している点は見逃すことができません。

企業セクターゾーンとはリスクの高い企業が借りるレバレッジドローンやそれを商品化したCLO、ハイイールドボンド、投資適格債における格下げのリスクなどでやはり今年から来年にかけては社債市場に大きな問題が起きる可能性が高くなっていることを教授も暗に示唆している点が非常に気になりところです。

FRBが積極的に利下げをしている最中に社債市場のリスクが高まるというのはすぐには理解しずらい問題ですが、市場から投資資金が撤退しはじめるとそもそも流動性のない市場ですからパニック売りが加速し、結果的にスプレッドは拡大しこれまで投資適格債と呼ばれていたような商品でも格付けが下落、これに引きずられるような形で入イールド債やCLOにデフォルトが続出するという連鎖に陥るリスクがあるというわけです。

社債市場のリスクについては新債券の異名をもつジェフリーガンドラックもすでに指摘しているもので、次の暴落がリーマンショックを超えるかどうかはこうしたネガティブな供給ショックが継続するかどうか次第ということになりそうです。実際の市場では危ない危ないと言われている間はそれほど決定的なことは起きないとされていますが、足元ではレバレッジドローン市場から資金を引き揚げ始めたファンド勢もあり、実際に新規でレバレッジドローンが成立しないという米系企業も出始めています。現状の金融市場ではそれほどリスクが高まった感じがしないのが正直なところですが、危機的状況は一気に加速して進むのが世の常ですから、ここからは相当に注意しなくてはならないことがわかります。

ルービニ教授はとにかくネガティブなネタに関しては立て板に水の状態で延々と説明してくれるタイプですから、金融市場では嫌がる人も多いようですが、あながち間違いではない内容をどう認識するかが非常に重要になりそうです。