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英国議会は14日に開会し、エリザベス女王が施政方針を読み上げる女王演説が開催されるど、いよいよ31日のEU離脱期限に向けて佳境に入ってきたことが感じられる状況です。

多くの個人投資家は今週EU首脳会談が開催されることから英国のEU離脱騒動でも相場が動くのはもっぱら前倒しで今週中と読み込んでいるようですが、どうも主要な金融機関はそうではなくEU首脳会談後のボリスジョンソンの動きからまさかの合意なき離脱が現実のものになった際の相場の大きな変動に備えていることが徐々にわかりつつあります。

実際為替市場ではポンドの動きは先週の強烈な買戻し以降大きくなっていませんし、英国の株式市場も大きな波乱は見られておらず、オプションの相場もいたって静穏な時間が経過しています。

金融機関は21日からの10日間を警戒

嵐の前の静けさのような状況が気味の悪さを誘いますが、主要な金融機関はむしろEUサミット後のボリスジョンソンの動きからまだ合意なき離脱が成立する危険性をかなり意識しているようで、むしろ週明けの21日から31日までの10日間に臨戦体制を敷いていることが分かってきています。

市場の大方の見方では、合意のある離脱が成立しないことからまた3ヶ月間の離脱延期延期となるだけという発想がかなり強くなっているようですが、もっとも織り込まれていない合意なき離脱が起きたときが金融市場最大のパニックになり大きなボラティリティが発生することを警戒していることがわかります。

奇しくも10月21日からはUKの学校は秋休みとなることから休暇のシーズンになっているようですが、多くの金融機関はUKでトレーディング部門に所属する行員について安易に休みをとらないように指示を出しているとも言われており、いかに合意なき離脱が決定すると相場があれることになるかを示唆する状況となっています。

合意なき離脱による金融市場への影響は精査されていない

UKの合意なき離脱に関しては2016年6月末の国民投票でその方向性が決定してから実に3年4か月近い歳月を経ているわけですが、金融市場においてどれだけのネガティブインパクトがあるのかについてはいろいろな試算がでていることは確かですが、もう一つ確証のある、しかも市場全体が織り込んでいる内容というものが非常に希薄である点が気になるところです。各金融機関は自社の取引に対する影響についてはそれなりの分析をしているようですが、市場トータルでどのような形なってしまうのかについてはもうひとつはっきりしていない状況といえます。

特に合意なき離脱については実に精査が進んでいないなかで現実のものになってしまうリスクが常について回っているだけに21日からの10日間に緊張状態が加速するという話はある意味非常に納得できるものがあります。

基本的には今回そうした想定外の事態になることはあまり考えられませんが、それでもこれだけUKの金融業界が戦々恐々としているということは一応可能性のある事態として認識しておく必要がありそうです。特に今週になってもボリスジョンソンがどのような形でEUと決着をつけるのかまったくわからない点はかなり大きなリスクで、安心は禁物なようです。少なくとも週末から21日にかけて無闇にポジションを持ち越さないといった対策を行うことは必須の状況のようです。これはポンドの取引をしないほかの通貨ペア専門のトレーダーも同様に十分な注意が必要になります。ポンドドルで5円以上の相場下落があった場合には確実にドル円にも影響を及ぼすことになるだけにひとごとでは済まない状況といえます。十分にご注意ください。