2019年1月3日、突然ドル円に起きたフラッシュクラッシュですが、実は初動でおかしな動きをしたのはドルトルコリラで、これが一気に売られたことから、トルコリラ円も大きな下落の動きとなり当然ドル円にもその影響がでて、アルゴリズムなどが過剰に反応したうえに、下値の領域にほとんど買いのリーブオーダーがなかったことから、ドル円は105円を下回るところまで瞬間に大幅な下落を実現することとなってしまいました。

流石に今年の年末と2020年の年始は、実需の向きもこの反省からドル円は下値ですでに、かなりのリーブオーダーを置き始めているといわれており、この正月明けは昨年のようなことは簡単には起きなさそうな雰囲気にはなってきています。

ただし、ドル円はある程度安全でもトルコリラのほうが心配な状況で、こちらは年末から年始に向けて警戒が必要になってきています。

エルドアン怒り心頭で何が起きるかわからない状況に

Photo Reuters https://www.rtl.de/cms/erdogan-besuch-in-deutschland-fuehrende-politiker-sagen-staatsbankett-ab-cem-oezdemir-will-teilnehmen-4226523.html

トルコの国内経済はインフレも収まるようになり、比較的落ち着きを見せているわけですが、もっぱら問題は外交と内政の部分に集中しはじめており、トルコリラはここのところ下げの激しい状況になってきています。

NATOの構成国であるにもかかわらず、ロシアから購入したS400のミサイルはやがて問題になるであろうことはわかっていたわけですが、米国からちらつかされている制裁措置に対してエルドアン大統領は報復を口にし始めています。

ロシアの天然ガスを黒海とトルコを経由して欧州に輸送する「トルコストリーム」と呼ばれるパイプラインへの米国の制裁示唆にも相当頭にきているようで、ここからはどういう制裁合戦が起こるか判らないところまで来ている状況です。

そうでなくてもエルドアンは、米国上院が1世紀も前のアルメニア人虐殺事件を今頃虐殺と認定したことにも相当頭にきているようで、ここからのトランプとの応酬次第では大変なリスクが高まる可能性が否定できません。

国の力と規模からいえば、トルコと米国が対等に戦うことなどありえないと思われがちですが、実はトルコはかなりのシリアからの難民を抱えており、こうした難民を欧州に向けて放出する様なシリア難民の暴発的展開が起きれば大混乱になることは間違いなさそうで、意外な武器を抱えている点で無視できない存在となっているのです。

しかもバックにはつねにロシアのプーチンの影がちらついていますから、予想以上に地政学リスクの高い国の問題ということができるのです。

日本人のトルコリラ円投資家が標的になる可能性に注意

政治的にはかなりリスクの高まりを見せているトルコ情勢ですが、為替の世界で気をつけなくてはならないのがトルコリラの取引です。

トルコリラ円週足推移

週足でみますと、昨年8月にトルコリラショックがあって、15.250円まで下がったトルコリラ円はその後かなり価格を回復しましたが、今年の正月のフラッシュクラッシュでは18.431円まで急落しましたが、足元ではそのレベルを下回る展開となっていることがわかります。

しかし、このレベルでは本邦の個人投資家が積極的にスワップ狙いで買い向かう動きをしており、26日のNYタイム明けに国内では金融機関のお休みから7倍のスワップがつくこともあって、買い増しが増えている状況にあるようです。

この状況は投機筋にも周知の事実となっていることから、新年第一週本邦勢がお休みの間になにか仕掛け売りが出た場合にはかなり大きな下落につながることもありそうで、すでに年末から注意をしておきたいところとなってきています。

とくに新年に相当ななにかが起きた場合には、2日の東京タイムから大きくギャップダウンで始まることもありそうで、スワップ狙いでポジションを持っている向きは当然ストップロスを置いていないのが実情ですから、強制ロスカットが出るレベルもほぼ似たようなところに集まるため、ストップロスハンティングがもっとも出やすい通貨であることを忘れてはならない状況です。

昨年の最安値からみてもまだ3円以上に値幅がありますし、さらに下値を追うことも十分に考えられますので、できればこの休みにトルコリラ円のロングやドルトルコリラのショートをそのまま保有し続けるのはやめたほうがよさそうな雰囲気が強まっています。

とにかく何が起きてもいいように準備をしておく必要がありそうな年末年始相場です。