2月17日、内閣府が発表した2019年10月~12月の四半期GDPの速報値は日銀黒田総裁が事前に告知していたように、案の定マイナスの成長となり、実質GDPの落ち込みは前期比マイナス1.6%、年率にするとマイナス6.3%もの下落となりました。

内閣府の説明では台風や消費増税による駆け込み反動減、米中摩擦による不透明感などから、消費、設備投資もすべてマイナスになったということですが、これが台風や暖冬の影響ではなく消費増税が主たる原因であることは火を見るよりも明らかな状況です。

年率にしてマイナス6.3%というのは、東日本大震災直後の2011年1~3月の落ち込みでも年率換算でマイナス3.5%ですから、その1.8倍もの威力を発揮してしまったことになり、政権や日銀総裁がしきりに説明していた国内景気は緩やかに回復しているという話は事実ではないことがわかります。

リーマンショック級の経済の落ち込みがあれば消費増税は実施しないという話でしたが、結果的には増税をおこなったことでリーマンショック級の景気の落ち込みが発生してしまったことになります。

本邦は1~3月期さらにマイナス成長の危機

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直近では中国起因の新型肺炎の発症が水際で止めることもできず、既に感染ルートすら確認できないままに広がりを見せようとしています。

この調子で国内での爆発的感染が進めば1~3月の実質GDPはさらにマイナスを深堀りしそうな状況で、ここからいつまで感染が続くか次第で事前の楽観的な見方をはるかに上回る危機的な経済損失を起こしそうな勢いです。

どれだけ景気が落ち込むかは感染の状況を見守るしかないわけですが、震災はすでに起きてしまった1度のリスクイベント後に復興の需要もでてきましたから意外に落ち込んだ期間は短かったものの、ウイルスによる経済の停滞や景気の落ち込みは生産活動や消費活動に多大な影響を及ぼしそうです。

長引けばさらにGDPがマイナスを深堀する危険性があり、半年以上この状態が続けば完全に年間でマイナス成長が決まってしまいかねない状況になってきています。

中国発のインフレ、スタグフレーションに厳重注意

ここからさらに気をつけなくてはならないのが、中国発の新型肺炎を要因としたインフレ発生の問題です。

もともとこの肺炎発症が問題化する前から中国は豚コレラの影響で豚肉がかなり高騰し、消費者物価は大きく上昇していました。

そこにこの肺炎の問題が国内全土に追い打ちをかけるように上乗せしてきていますから、中国国内での生産活動の停止、物流の寸断から物不足が大幅な物価上昇を引き起こす可能性が出てきています。

実際、中国消費者物価指数は身近な消費財を中心として上昇傾向にあり、インフレが現実のものになるリスクは高まっています。

インフレが進行すればPBOC、中国人民銀行が莫大な資金を投入して緩和措置を続けることができなくなるのは時間の問題で、これが米国や日本に波及することが非常に大きなリスクになりそうです。

インフレが起きれば中央銀行の過剰金融緩和は終焉し打つ手なし

現在FRBは月額600億ドル、日銀が年間かけてETFで株式市場に買いを入れている金額以上のものをたった1か月で短期債購入に充てており、過去のQEよりもはるかに大規模な隠れ金融緩和を延々と続けている状況です。

パウエル議長の議会証言の発言からしますと、今年の6月までは延々とこの体制を続けるということですから、緩和が中止にならない限りは米株は上昇を続けそうな気配です。

しかしひとたび中国の新型肺炎をきっかけにしてインフレが到来するようなことになれば、状況は大幅に変化しFRBは完全に緩和措置を止めざるを得なくなります。

場合によっては利上げを行う必要性もでてくることになり、これまで延々と続けてきた政策が終焉を迎えることで、何も景気に対する手立てを失いかねないところにさしかかるであろう点が非常に懸念されるところです。

金融市場もFRBもインフレについては全くと言っていいほど準備ができていませんから、実際に中国からインフレが拡大するような状況になればかなり慌てる状況になるのは間違いなさそうで、特に米株は上昇から激しく反転下落する危険性が高まります。

国内景気は今この状態でインフレがのしかかれば完全に不景気でインフレとなるいわゆるスタグフレーションに陥る状況です。

当然ドル円も同様の状況で、これまでは中国経済の落ち込みの影響だけを懸案してきた市場ですが、ここからはインフレについても注視しなくてはならない時間帯に突入してきているようです。