世界的に猛威をふるう新型コロナウイルスで、主要国の経済見通しはここからさらに悪化が容易に予想される状況になってきています。

とくに世界有数の大国である米国のここからの経済状況は見逃すことのできないものとなりますが、既に中国を超える感染者数に直面する米国の4~6月のGDPの落込みは非常に注目されつつある指標になっています。

既に米国の金融各社はそれぞれの予想を公表しはじめていますが、かなりの悪化を見込むものも現れ始めており、実際のGDPの速報値がどのようになるのかが注目されます。

上の表はZeroHegdeがまとめたものです。

楽観的な見方をしているところでも次の四半期は9パーセント以上の下落を見込み始めており、最悪のケースを想定しているキャピタルエコノミクスはマイナス40%、ゴールドマンサックスでマイナス34%の落込みを想定しています。

これが現実のものになりさらにその期間が長くなれば、今年の米国経済は悪い状況に陥ることが見えてくることになります。

リセッションというのは、これまでも一定の期間に必ず発生する避けられない経済状況でありましたが、ウイルス感染でここまで経済が壊滅的な影響を受けるというのは、近代社会になってからほとんど経験したことがないものであり、これが現実のものになった場合には市場への影響もはかりしれないものになりそうで、非常に危機感を覚えるところとなってきています。

トランプ大統領は具体的な被害規模を開示

トランプ大統領は3月31日にホワイトハウスで記者会見を行い、今回の新型コロナウイルスによるここからの米国内での感染による死者数は10万人を超え、最悪の場合には24万人に達するとの見通しを公式に明らかにしています。

ここからの2週間が痛みを伴う時間帯としており、前途に困難な日々が待ち受けることを覚悟してほしいと国民に呼びかけています。

これまで米国では数十万人規模の感染者が発生する可能性が示唆されてきました。

すでにNY州は完全に非常事態の真っ最中にあり、ほかの州にも同様の事態が広がることを考えますと、まさにウイルスとの戦争を行う状況に追い込まれていることがわかります。

我々はこの新型コロナとの戦いにもう一つリアリティを持てないままに遭遇していますが、ここからは明らかに想定を大きく超えた厳しい状況に陥ることが予想され、人的な被害も経済的な被害も相当規模に大きなものになることを覚悟しておく必要がでてきているようです。

為替に関して言えば、米国のウイルス被害の規模が明確に顕在化してきた場合には当然のことながら、ドルが売られて円が買われるといういつもながらのリスクオフが進行することが予想されます。

この新型ウイルス感染は世界同時多発的なものであるだけに、日本の状況が米国をさらに上回る悲惨な状況に陥った場合は、今度こそ円が売られてドルが買われるという明確な円売りが示現するリスクもあり、各国のウイルス感染、死亡者数の状況が果たしてどう推移するのかを注意深く見守る必要がでてきています。

金融市場にとってはこうした材料が相場を支配するというのはほとんど経験したことがないだけに、これまでのようなAIやアルゴが増幅して判りにくくしてきた相場の状況とはまた異なる世界に直面することになりそうで、とにかく冷静に対応することで判断を誤らないようにする努力が求められることになりそうです。

国内の不透明な状況は相当心配

国内の状況に目をやりますと、多くの先進諸国がウイルスと戦争をする位の勢いでこのリスクに立ち向かおうとしているのですが、どうも安倍内閣はそうした緊張感とは程遠いところにあるようで、政策対応も他の主要国にはまったく及ばない状況に陥っていることがわかます。

とくに経済の落込みに関しては尋常ではないところに向かっていることをもう一つ認識できていないようで、対応の遅れこそがまさに経済の悲劇的な崩壊を招きかねない状況である点が非常に危惧されるところです。

状況次第では日本だけが大きなウイルス敗戦国になりかねないだけに、ここからの政権の動きにも注意していきたいところです。