市場は新柄コロナウイルスの感染拡大に翻弄され、感染者数の動きなどで大きく上下にブレる動きを延々と続けています。
その陰に隠れて相場に影響を与えているのが原油価格の動きで、大暴落から一転して上昇に転じたこの相場で株も為替も大きな値動きを示現する様になっています。
そもそも原油価格大暴落の原因とは
3月の原油価格の大幅下落には二つの要因があるとされています。
一つ目は3月4日のOPECと非OPECの会議が決裂したことに加え、二つ目は新型コロナのまん延に伴う経済活動停滞からくる石油需要の急激な落ち込みが価格に影響を与えていることです。
確かにどちらも直近の原油価格の下落に大きなインパクトを与えていることは事実です。
しかし5日の会議の背後には、ロシアとサウジアラビアの政治的な動きが大きな影響を与えていると言われており、プーチン大統領が減産に賛成しない旨を表明し、それにまるで乗っかるような形でサウジアラビアが増産を表明したことから相場の暴落が加速したという経緯があります。
需要減なのに減産しなければ、あるいはあえて増産すれば価格が大きく下落するのは需給のバランスから言って当たり前ですが、こうした動きには米国のシェールガス潰しがあるという見方が非常に強く、現実にシェールオイルを扱う中小事業者には破綻するところも現れており、シェールガス関連のジャンク債は大きく値をさげてデフォルト寸前のところも増加しているのが実情となっています。
このロシアとサウジの動きを受けてWTI原油先物は10ドル台まで突っ込む下落となり、さらに酷いことになるのではといった悲観的な見方もでる状況となっていました。
トランプの2日ツイートで状況一変
トランプ大統領が2日、久々に市場を揺るがすようなツイートをしたことから相場は大きく動くことになりました。
その内容には「日量1000-1500万バレル規模の石油減産が期待される」と具体的な数字が示されており、さらにこのツイートを追認するかのようにサウジアラビアは、OPECプラスに緊急会合の開催を呼びかけたというメディア報道が流れたことからWTI原油先物はいきなり35%上昇することになり、NYダウも200ドル程度の下落から一気に534ドル高へと切り返し、470ドル弱の上昇で取引を終了することになりました。
ドル円は新規失業保険申請件数が600万件を上回る最悪の数字を受けて107円を割りそうな勢いでしたが、結果的には下値をためすこともなく買い戻される動きを強め、一時は108円台にまで上昇するという大きなショートカバーを示現しています。
どこかで協調減産の話しがでてくることは市場参加者の多くが期待していたところですが、このタイミングでトランプの口からそれがツイートで発表されるというのは、なかなか衝撃的で相場の上昇に拍車をかけることになったのは事実のようです。
但しこの話はまだ決定しているわけではありませんし、減産規模も確定していない中での予想的な観測に過ぎません。
さらに巻き戻しの巻き戻しが起きるリスクはありそうで、新型コロナの動向とは別に原油市場の動きを注視する必要があることを改めて感じさせられる事態となりました。
原油を巡る政治的な動きは実に判りにくい
現状の相場はもはや新型ウイルスとの世界大戦の様相を現しているだけに、原油のことなどでもめている場合ではないはずですが、ロシアやサウジアラビアという石油でカネを稼ぐ国はこうした状況でも平気で寝技を使って相場をかく乱してくるわけですから、金融市場にはリスクが一杯であることを痛感させられる次第です。
このような複雑な状況に突然トランプが登場して先行きを語るというのも不思議な世界ですが、それ位石油価格は政治的な領域に入り込んでいることを感じさせられます。