6月のFOMCの政策決定以降、市場では依然として様々な憶測が飛び交いテーパリング時期が早まるのではないかといった観測は一向に収まる気配がありません。

米株のほうは一旦落ち着きをみせており再上昇がはじまっていますが、為替は対円でドル高が進行中であり、FOMC以降の相場の変化は続いている状況です。

各地区連銀総裁はいつも通りタカ派やハト派が入り乱れて様々な見通しを語っていますが、全会一致が基本であるFRBは全体としてはかなりバイデン政権からその親和性を求められているようで、ここからのインフレに対する見通しも苦しい見解を出し続ける状況に追い込まれているようです。

金融市場ではFRBの政権とは離れた独自性を信用するFedウォッチャーがかなり多く存在しているようですが、現実には必ずしもそうではない部分が見え隠れしはじめており、これが市場の先行き予測とFRBのリアルな政策との間に大きな齟齬を生じさせていることがわかります。

バイデン政権内のイエレン財務長官でさえインフレ予測を訂正する始末

6月初旬、バイデン政権が6.1兆ドル超の2022年以降の予算案を開示した直後に、イエレン財務長官がメディアのインタビューに答え、「大きな政府の実現はそれなりのインフレが伴うであろう」というという経済学者なら当たり前に考える内容に触れてしまったようで、その後ホワイトハウスから叱責を受け8時間後に内容訂正の会見を開くという事態が起きることとなりました。

現役の財務長官がインフレ見通しの発言にわざわざ会見を開いてまで修正をかけてくるわけですから、バイデン政権は大きな政府を履行しても全くインフレには気を遣う見通しがないことが透けて見え始めています。

行政管理予算局が提出した72ページにおよぶ資料に示されていますが、ここから10年間のインフレ率見通しで2031年まで年間インフレ率2.1~2.3%で想定しており、10年債利回りもこの先4年については1.4~2.1%としインフレ率を下回り続けると想定しており、これはFRBにも同様の政策実施を求めてくることになるのはほぼ間違いのない状況のようです。

イエレン財務長官はFRBが優秀であるから2度と金融危機は起きないとまで発言をしており、FRBとの関係が密接であることを仄めかしている状況です。

トルコのエルドアンと中央銀行のいびつな関係は金融市場では非常に有名で注目されていますが、米政権とFRBも裏では通じ合っているようで、特にバイデン政権はFRBに対して強い親和性を求めていることがわかります。

パウエル議長は任期終了を目前にしてすでに政権にいいなりの状況

Photo Reuters. https://jp.reuters.com/article/usa-biden-fed-idJPKCN2DY2N0

FOMC後、22日に下院の議会証言に登場したパウエル議長は労働市場の広範で包摂的な回復を促進するとし、インフレ懸念のみに基づいた性急な利上げは実施しないと改めて確約し、バイデン政権の言説との親和性を高めようとしていることが判っています。

FOMCでかなりタカ派の印象を市場に与えてしまったことを必死に戻そうとしている気配は濃厚で、ここからはインフレの話も慎重にならざるを得ない状況が垣間見えます。

パウエル議長は来年2月に任期を終えることになり、さらに継続することになるのかどうかが注目されていますが、バイデン政権内ではブレーナード理事を後任とする動きもかなり強まっており、パウエル議長がさらなる任期延長を望むのであればよりバイデン政権の政策に沿った発言や金融政策に打ってでることが考えられます。

市場ではFOMC委員の金利先行き見通しを示すドットプロットの変化が非常に大きくクローズアップされることとなりましたが、過去10年のドットプロットを細かく観察していても予想通りの金利展開には全くなっておらず、経済学者が多いFRBメンバーへの一応の敬意を示したツールに過ぎないという見方も強まっています。

市場は異常とも思えるほどテーパリングの前倒しに期待しているようですが実際にはそうは行かない可能性が高そうで、先行きやギャップの埋め戻しが相場に示現するリスクを考えておく必要がありそうです。