市場が大注目したジャクソンホールのFRB年次会合を通過して金融市場はいよいよ秋相場入りする時間になってきました。
25日の日本時間午後11時過ぎからFRBパウエル議長のジャクソンホールでの講演はかなり短いものになりましたが、ここからのFOMCでの利上げについては前回の同会議後の記者会見で口にしたように一段の金融引き締めを実施すべきかどうかの決定は慎重に進めるとしつつ、依然としてインフレが目標の2%に回帰するために政策金利が十分に高いとは結論付けていないとも強調、これをうけてドル円相場は146円台に大きく上昇しました。
ただここからの利上げは慎重に行うといった発言も飛び出したことからドル円は一旦145.700円台にまで下落する場面もあり、結局1円幅での上下動を見せる結果となりましたが、最終的な決定はデータ次第だとしながらも利上げ継続と市場が捉えたことから再上昇して146.700円レベルをつけ、146.370円近辺で週の取引を終えています。
全体的には7月のFOMC後の会見での発言をほぼトレースした様な内容でしたが、市場はあらためて利上げ継続意向を確認した状態となりました。
週明けドル円がさらに上昇軌道に乗るのかどうかが大きな注目ポイント
ジャクソンホールを経てドル円は年初来高値を更新する動きにはなりましたが、この上昇は昨年のこの時期の猛烈な上値追いに比べるとかなり過熱感を欠いていることから147円にまでは到達せずに146円台と143円台を行き来するレンジ相場になる可能性もありそうです。
日米の金利差から言えばすでに148円台に到達してもおかしくないはずですが、実際は介入警戒感も手伝ってか上値はそれほど一気に伸びておらず、ジャクソンホール会合を通過し期待感から買われたドルに一定のリカクがでて調整売りの相場になることも予想されます。
シーズナルサイクルから言えば8月末から9月はドル円が上昇する時期ですが、今年の場合8月にほとんど調整下落をしていないのでこのまま上昇軌道に乗ることになるのかどうかが非常に大きな注目点となります。
連日50銭程度の上値追いでは本邦財務省が指摘する大幅なボラティリティを抑える為替介入は非常にやりにくくなっているのもまた事実で、ここのところ当局からの牽制発言もすっかり聞かれなくなっています。
ただ物理的な水準として150円を超え始めれば大きな値幅の上げとは関係なく介入を行ってくることもありそうで、投機筋と当局のイタチごっこのような状況はまだまだ継続しそうな雰囲気です。
大きくトレンド転換がはかられるためには米国が利下げに転じる、もしくは本邦日銀が利上げに動くことが必須ですが、それが実現しない以上大きな転換にはならなさそうで、個別指標で上下動が続きそうなので油断は禁物です。
週明けは米第2四半期GDP改定値、米7月PCEデフレータ、金曜日9月入りで米8月雇用統計、米8月ISM製造業景況指数などの重要指標が発表されるため個別の指標で相変わらず一喜一憂の相場となることが予想されるところです。
今年は北米も酷暑で北半球はどこに行っても暑いことから海外の運用者も長く夏休みをとっているようで、本格稼働は9月に入ってからという見方も強まっていますが、参加者が少ない時間帯は逆に大きなボラティリティを示現しやすくなるので引き続き慎重な取引を心がける必要があります。
経済指標が一斉に悪化したことからユーロは下落しやすい時間帯に突入か
一方ユーロについては先週発表された経済指標が軒並悪化しはじめており、欧州経済の先行き不透明感が驚くほど高まりつつあります。
このためここからの利上げもはっきりしない状況で、ドルとの比較上ユーロは益々売られやすくなりそうな時間帯に突入してきています。
週明けは8月31日に予定されているユーロ圏8月HICP速報値に注目が集まりますが、上述の米国指標でドルが強含む場合でもユーロは売られ安くなりますので相当注意が必要です。
ユーロドルはテクニカル的には一目均衡表基準線、一目均衡表転換線、一目均衡表雲上下限、ボリンジャーミッドバンド、21日線、50日線、90日線、200日線といった主なポイントを下抜けるといった弱さを示現しているので売りは出やすく、特に日足で200日線を割り込んで先週の取引を終えたことは週明けさらなる下値だめしの動きになることも覚悟しておかなくてはなりません。
場合によっては1.0600を下抜けるような下落を試す可能性も視野に入れて取引することが肝要となります。
ジャクソンホールを通過したことで相場におけるテーマは若干希薄になっていますが、ここからは夏休みで不在だった市場参加者も相場に戻ってくることになるので本格的な秋相場に備える必要があり、流れの変化にも柔軟に対応できるトレード姿勢が求められる一週間になりそうです。