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菅政権はとうとう東京五輪開催に踏み切ることとなり、感染者もさして減少していないにも関わらず沖縄以外の地域の非常事態宣言を解除しています。

すでに五輪の選手関係も国内に到着している状況ですが、足もとで急激に危惧されることとなっているのがいわゆるデルタ株と呼ばれる変異株の国内感染の加速化で、五輪競技の観戦者上限は1万人としながらも開会式は2万人を許容、海外からの選手は厳重検査で入国としていたもののコンゴ選手団のうち1名にすでにPCR検査陽性者が出るなどの問題が現実に起きており、完全に隔離されるはずの選手村では飲酒OKに加えUberEatsの利用すら認められる情勢となっており、現実のコロナ対策は我々が考える以上にゆるゆるの状態になっています。

こうなると東京五輪開催を契機として国内に変異株が爆発的感染となる危険性はかなり高そうで、果たしてそういう事態に陥った時に為替がどうなるのかが非常に気になるところとなってきました。

そもそもデルタ株とは?

デルタといいますと金融市場ではオプション価格の変化を計測するための市場感応度のことを重い浮かべるかたも多いと思いますが全く関係なく、WHOが5月末になって特定の国への差別的な扱いを防ぐため、主な変異ウイルスについて、ギリシャ文字による呼称を使うようになったことから呼ばれる変異株の名称となっています。

イギリスで最初に確認された変異ウイルスは「アルファ」、南アフリカで確認されたものは 「ベータ」、ブラジルで広がったものは「ガンマ」、そしてインドで確認されたもののうち、最も拡大しているものは「デルタ」と呼ばれるようになっています。

6月初旬段階ではすでにデルタ株が見つかった国や地域は74にも及んでおり、当然東京などでもその変異株はPCR検査の陽性者で明確に見つかっており、都の一部の機関のスクリーニング調査では実に3割がデルタ株であるという結果も公表されています。

このデルタ株の感染力は従来からのウイルスの1.78倍と強力で、英国ではすでに2回のワクチン接種を受けた人でも再感染して重傷化はしないものの、ワクチンが効かない状態が示現しているといいます。

一部の国内研究機関の試算では7月中旬には国内感染者全体のほぼ半数がデルタ株となる見込みのようで、さらに選手、メディア関係者、協賛スポンサーの来日者など7万人以上が国内を移動することになれば間違いなく爆発的な感染拡大は免れない状況に陥りそうです。

英国のケースを思えば国内爆発的感染は自国通貨売りか

すでに先行してかなりの国民がワクチンを接種した英国ではロックダウンの完全解除も目前に迫っていましたが、変異株のいきなりの加速的感染再拡大ですべてのスケジュールが後ずれの状況となっています。

6月中旬にG7サミットを行った英国の英南西部コーンウォールではサミット終了前後ごろから新型コロナウイルスの新規感染者数が増加に転じており、英国政府は否定していますがどうやら人の移動が大きく増えた場合には確実に感染者が激増することを示唆していることがわかります。

東京五輪の場合、コーンウォールの比ではありませんから感染拡大は我々の想定をはるかに超えることとなるのは間違いなさそうで、非常に厳しい状況に追い込まれることは覚悟せざるを得ないものがあります。

先週のポンドはFOMCの結果を受けたドル高の影響にさらにポンド安という材料を上乗せして相当な下落となりました。

本邦起因が明確になればドル円は円売りで上昇か

新型コロナ感染が問題になってからは日経平均もドル円も2020年3月に激しい下落に見舞われたことは記憶に新しいところですが、本邦の感染者数ならびに感染率は欧米のそれらと比較しても相当低く、世界的な相場下落に巻き込まれてリスクオフの円高になったことしか経験していません。

しかし今回本邦起因、特に東京五輪が大きな原因としてデルタ株感染者が爆発的に拡大し世界に広げるきっかけとなった場合にはリスクオフでも円が売られドル高になる可能性が高くなりそうな状況です。

アルゴリズムによるリスク回避の初動段階では通常どおりドル安円高が示現する時間もありそうですが、日本発の問題ということが明確になればドル円は円が売られることでドル高になることも十分想定しておく必要がありそうです。

そのタイミングは当初は五輪開催以降と考えられてきましたが、ややもすれば7月のごく早い段階で示現するリスクも覚悟しておかなくてはなりません。

東京五輪の開催で為替相場に劇的な影響がでることなどまったく予想してこなかったわけですが、実際にはそうした状況が現実のものになるということは肝に銘じるべき時が到来しているようです。