ブレーナードFRB理事がこの先のテーパリングに対して独自の見解を口にし、市場の注目を集めています。
その内容とは、資産購入縮小のためには雇用水準の改善が必要といったもので、現状の雇用水準は680万人足りず、さらにパンデミック前のトレンドに対して910万人も下回っているとかなり具体的な数字を挙げており、見方によってはパウエル議長よりもさらにハト派で慎重な姿勢を打ち出していることが分かります。
ブレーナード理事は来年2月に任期切れとなるパウエルの後継者と言われており、この手の発言は行き過ぎたテーパリング期待を巻き戻す材料になりかねず、ドル円がドル安方向に動くリスクを考える必要があります。
FRB議長が人事を早めに決定するとパウエルがレームダック化することも考えられることから、具体的な動きは秋以降となる可能性が高いと思われますが、すでに市場では大きな関心を集め始めています。
ヒラリークリントン政権誕生ならFRB議長後任か財務長官に抜擢されていたはずの存在
ブレーナード氏はカート・キャンベル前国務次官補の妻としても知られる人物で、オバマ政権では国際担当財務次官も務めており民主党員でもあることから、民主党政権内では経済、金融領域で役職につくであろうことが噂されていることでも有名です。
ヒラリークリントン政権が誕生する時には、FRB議長もしくは財務長官に抜擢されるという憶測もありましたが、トランプ政権が誕生したことでその人事はとん挫し、バイデン政権になってから改めてFRB次期議長に就任するのではないかという見方が強まっています。
足もとではホワイトハウスのパウエルに対する信認性は高く、次期4年も続投するのではないかと噂されていますが、パウエルはトランプに任命された人物であり経済学の学士号や博士号は持っていません。
経験は豊富でも継続してバイデン政権が利用していくことになるかどうかは不透明で、ここからブレーナード交代説が高まることになれば為替市場にも変化が現れることは間違いないでしょう。
人事がどうなるのかは恐らくジャクソンホール以降に動くだろうと思われますが、こうなってしまうと市場が非常に期待しているテーパリングの早期実施などがうやむやになってしまいそうなので、ここからのFRB人事はマーケットの大きな関心事になりそうです。
ブレーナード次期FRB議長決定ならテーパリングは大きく後退か
足もとでは連邦予算のシーリングの問題に対し揉めていますが、連邦債務は日本円にして既に3000兆円という莫大な金額に及んでおり、その一部は税収をさらに拡大して補うことも考えられています。
しかし基本は赤字国債の発行で賄われていて、バイデン政権が大きなインフラ投資を行おうとしている間は簡単に利上げはできず、多少のインフレ的傾向が現れたとしても我慢して金利を下げたままの政策をFRBに求めてくることは間違いないでしょう。
バイデン政権と極めて親和性の高いブレーナードがFRB議長に選任された場合には、さらに政権寄りの政策を打ち出してくる可能性が高く、特に中間選挙が行われる2022年までは今の政策が継続されると考えられています。
またパウエルの続投が決まったとしてもかなりの政権寄りに政策を取るだろうと考えられており、全体的にテーパリングが早期実現するのは相当難しいと思われます。
いずれにしても今年の為替市場はFRBの政策動向が最大のテーマとなっているだけに、この領域で明確な動きが出てくれば相場も敏感に反応することは確実で、ここからはかなり注意が必要になりそうです。