市場はすでに2022年の相場から2023年の相場見通しに着目するようになってきていますが、米欧の大手金融機関などが発表する来年の相場見通しがかなり割れ始めており、プロが見ても来年の相場がどうなるのかが予測しにくくなっています。
とくにその中でも見通しが別れるのが米国の政策金利の推移で、足もとの相場ではパウエル議長が12月の利上げ率を下げることを織り込み、妙に浮かれた楽観的相場が示現しましたが、金融市場関係者はそれほど単純に考えていないようでリアルな来年の相場はかなり難しいものになりそうな状況です。

過去に例を見ない過剰なQEからのFRBの利上げ、金融引き締めが予測を困難に

来年の相場を予測するのが非常に難しくなっているのにはいくつかの理由が存在するようです。
まず2008年のリーマンショックからすでに14年以上FRBは延々と緩和を続け、さらに新型コロナの感染拡大で無制限QEを実施してしまったことから、ひとたびインフレになればどこまで利上げをして巻き戻すのかが非常に難しくなっていることが挙げられます。

足もとの市場では月次の米国CPIのピークアウトからすでにインフレが沈静化しつつあるかのように認識を始めていますが、複数の経済データからみるとさらに利上げを進めなくてはならない結果も現れ始めており、単一データだけから判断することが極めて難しくFF金利が5%を超え始めることも完全には否定できないのが現状となっています。
実際2日金曜日に発表された米国の雇用統計では、FRBがここ数回のFOMCでかなり積極的な利上げを行ってきたにも関らず労働市場の冷え込みがほどんどみらない強い結果が示現しており、このままで行くとFRBは来年5月までに政策金利を5%超に引き上げるとの予測も顕在化しはじめています。

また、一部の金融アナリストはターミナルレートが5%以上に引き上げられたとしても2023年度中に金利の引き下げを見込み始めていますが、過去の米国の利上げ政策の実績から見ると一旦上げたFF金利は最低でも半年、下手をすれば1年以上継続するといった悲観的な見方もではじめており、アナリストによって見立てもバラツキ始めています。

ドル円相場は再上昇の可能性も残る状況に

この時期になると来年の為替・ドル円相場予測が様々なメディアに登場してきますが、現状では来年の相場は130円から135円、つまりまさに現状の水準辺りで推移すると予測する向きが多く、上げても145円程度と考えているアナリストが多いことが見えてきます。
ドル円の場合来年の前半に不確定要素が高いのは日銀のポスト黒田人事がどうなるのかという問題もあって、米国のFF金利がどうなるのかも正確に見極めることが出来ない中ではこうしたモラトリアムな予想しか出てこないのもよくわかります。

ただ、今年示現した円安の要素は今のところ何一つとして解決しておらず、さらに年明け円安が進むこともまだ視野に入れておく必要がありそうです。
相場のことは相場から知るのが一番大事なため、誰がどう予測したという話から予断をもって望まないニュートラルな姿勢の維持も重要になりそうです。

そもそも相場水準を当てられても別に相場で儲かるとは限らない

今年の為替相場、とりわけドル円は11月にとうとう150円超にまで上昇したので、年初の114円台で買い持ちしてずっと保有していれば38円以上の利益にありつくことができました。
しかし為替相場の場合Buy & Holdは最も効かないトレード法でもあり、結果的に相場を見れば爆益だったので最初からそうすればよかったと悔やむことになるものの、実際のトレードの状況に直面するとそこまで上昇するかは本当に不明で、たとえ150円超という予測を事前に知っていてもそれを利益として獲得するのは難しかったことが見えてきます。
今年のようにドル円が上昇したのは実に2012年前半の上昇から10年ぶりの動きになるのでかなりレアな相場であり、例年はそんな動きにはならないことも意識しておかなくてはなりません。

また為替の場合は年末にいくらになるといった水準予想が当たっても、それまでに激しく下落して元に戻るといった動きをするとデリバティブでレバレッジをかけている関係上結局損切を余儀なくされることになるため、相場予測が当たることと相場で儲けられるということは別の話になる点も注意する必要がありそうです。