今年は西側主要国で新型コロナのワクチン接種が大幅に進み、米国ではほとんど新型コロナ感染が問題にならないところまで回復しました。

そのため米国金融市場も新型コロナ感染はもう相場のテーマにならなくなった感がありましたが、ここへ来て急激に変異株であるデルタ株の感染が全米に広がりつつあり、欧州圏にも拡大が続いていることから、またしても新型コロナが金融市場にネガティブな影響を与える可能性が極めて高くなっています。

2020年3月に一旦暴落が起きてもその後また株式市場が大きく盛り返し史上最高値を更新し続けるといった驚くべき状況になりましたが、今回はそうした楽観的な状況ではなくなる可能性が高そうで、8月後半から9月にかけては相当な注意が必要でしょう。

米国では1日平均10万人超の新規感染者を記録

久々に登場したジョンズホプキンス大学の新型コロナダッシュボードですが、よく見てみると全米で再びコロナ変異株の感染が爆発的に拡大しており、その勢いは欧州にも伸びていることが分かります。

デルタ株に関しては感染すると周囲の7人から8人に簡単に感染させてしまうことや、さらにこれまで投与されたワクチンが全く効かないことが分かっています。

一部の医療関係者は2回の投与を3回に増やすなどの対策を検討しているようですが、これではほとんど感染抑止は振り出しに戻ったも同然で我々が考えている以上に事態は深刻になっています。

この8月は東京五輪での感染が原因で相場に影響がでるのではないかと想定していましたが、やはりこうした感染問題は米国を始めとする西側主要国で起きているということが相場に影響を与えていると思われます。

絶好調に見える米株相場もすでに新規のリスクマネーが入ってこない

昨年のコロナ相場では多くの個人投資家が市場に雪崩れ込み、結果的に大量の資金が株価を大きく押し上げる極めて特殊な相場状況を作り出しました。

足もとの相場は史上最高値の更新を継続していますが、ここから誰も高値を買い向かわなくなれば一気に相場の流れが転換することも十分に考えられます。

相場の暴落というのは決定的な材料があった上で起こると思われがちですが、実際は市場参加者のセンチメントの急激な変化が最大の要因なので、デルタ株が引き金となってセンチメントが変わればそれ以上の材料がなくても簡単に相場は下落していくことを市場参加者も意識しはじめており、それが8月中から9月に向けていきなり現れる危険性に多くの人が身構え始めています。

一般的には多くの市場参加者が暴落のリスクを感じている時は実際に暴落は起こらないという通説がありますが、足もとの相場を動かしているのはアルゴリズムやAIなので、人の裁量とレートの世界で十分に認識していることを蒸し返して増幅し、さらに相場の暴落に加担する可能性は否定できません。

今週日本勢はお盆休みなので、市場参加者が少ないことで仕掛け売買が起きるかもしれないと個人投資家は心配していますが、8月の残りの週を通じてデルタ株が原因の相場暴落や異変に対応できるようにし、今後もデルタ株の感染拡大状況を細かくチェックすることが重要になります。

新型コロナはやはり金融市場ではかなり大きな材料として生き残っていくことをしっかり認識しておきましょう。