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4月16日、菅首相は初めて首相として訪米し、世界のリーダーの中でも一番乗りで米国バイデン大統領との首脳会談に臨むこととなったわけですが、東京五輪と新型コロナワクチンの供給を巡って大きな成果が上がり、週明けの日経平均暴騰なども期待されたもの実際にはなんら期待に応える成果がなく、株価はマイナスに下落する場面もあり、逆に地政学リスクの高まりからドル高円高が示現してドル円全くぱっとしない動きに終始しています。

東京五輪へのエンドースは得られず

期待された東京五輪開催に対する米国の姿勢は想像以上に冷ややかで、菅首相が引き続き開催に努力することについては支持するものの、開催自体は依然として科学的に実施可能根拠があってはじめて開催可能という姿勢は崩しておらず、事実上、実施に対するエンドースは得られませんでした。

また当然米国選手団の来日を確約することもありませんでしたし、日本政府が期待したとされるバイデン自身の東京五輪へ来日などは全く話しにも出ない始末で全体としてはなんらサポートを得られるような状況ではなかったことが鮮明になっています。

新型コロナワクチンに関する本邦への優遇もなし

新型コロナに関しては米国内では7月の独立記念日前にはほぼ国民全員の接種が完了する見込みであることから、余剰なワクチンを本邦に回してくれるのではないかといった都合のいい期待が高まりましたが、バイデン政権が特段配慮してくれることは全くなかったようで、肩透かしの状況となりました。

本来、菅首相は訪米時にファイザーCEOと直接面会する予定を考えていたようですが、こちらも結局訪米して電話会議をするといった状況で、電話でかろうじて9月に全数のワクチン供給を得られる見通しということになっていますが、文書で取り交わしたのか正式なコミットがあったのかはよくわからないのが実情であやふやな状況が継続しています。

当然、週明けの東京株式市場がこうした状況を好感するわけもなく、ワクチン確保で相場上昇という期待は幻想に終わることとなりました。

対中戦略に組み入れられただけで地政学リスク上昇

金融市場、とりわけ為替市場がもっとも反応したのは日米首脳会談後の共同声明で台湾の安全に関わる内容が台湾という国名を鮮明に出して行われたことで、中国との地政学リスクがかなり高まったことからリスクオフでドル高円高が進んだことで、今後の中国の対応次第ではさらにリスクオフによりドル円が円高にふれる可能性も高まりを見てています。

中国政府はすでに日米の声明内容に猛烈な反発を始めており、尖閣諸島などでさらなる中国の動きが強まった場合、本当に戦闘状態に陥ることも十分ありそうで、今回の日米首脳会談の結果で相場に鮮明に示現したのはドル円の円高の流れだけということになってしまったようです。

この声明の結果、日本は対中囲い込みの仲間に加わることになったわけですが、実際の戦闘状態になった場合、自衛隊がどのような役割を果たすのか、どこまで米軍が戦うことになるのかは不明の部分もあり、日本が全面にでて中国とやりあう場面も想定されるだけに、菅総理の訪米はこれまでにない日本が直面するリスクを顕在化させてしまった可能性が高まります。

一部のメディアは菅外交の成功を強調していますが、中国とのリスクが高まりをみせて本当に成功なのかはかなり疑わしい部分があり、今後の情勢次第では米国にいいように取り込まれただけになることも考えられ、為替でも十分に状況見守る必要がでてくることになりそうです。