米労働省が2日に発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比85万人増と5月の58.3万人増から伸びが加速しましたが、失業率は5.9%と逆に悪化しています。

また平均賃金も0.3%の伸びと上昇は抑えめの状況です。

ドル円は前日と金曜日の東京タイムに先取で大きく上昇したものの、結果を受けて失速状態で週明け月曜日が米国の独立記念日の振替休日であることもあってロンドンフィキシングを超えてからはすでに相場が動かない状況になっています。

このコラムでは既にご紹介していますが、コロナが回復している米国経済下では白人の労働者はすでに仕事のオファーを選択できるような需給関係になっているようで、自ら離職するケースも増加中でこれが失業率に影響を与えているのは間違いない状況のようです。

こうなるとここからの雇用統計も一時的なNFPはそれなりに伸びても失業率がうまく改善しない可能性は高そうで、とくに黒人、有色人種などの失業率はほとんど改善していないという本質的な問題をかかえていますから、指標の数値がよければFRBも即テーパリングといった政策転換には向かわないことは明らかであまり先行きを見通す参考指標にはならなくなりそうな状況です。

月末、月初雇用統計睨みの買いで完全に踏みあげられたドル円ショーター

今回の雇用統計を巡っては事前の月末と月初のドル円に非常に顕著な動きがでることとなりました。

6月30日は本邦は月末でしたが欧米はカレンダーイヤーを会計年度とする企業の半期末であったこともありリバランスがでることとなりドル円、ユーロドルともにドル高にシフトする形となりました。

しかしドル円はその後も下がらずにむしろ雇用統計で良好な数字がでるのではという事前期待も伴ったのか、月初も上値を試す展開となりました。

この動きは英国中銀が先行きにかなりハト派的な見通しを出したことからポンドに対してドルが大きく買われたことの影響を受けたようで、相場全般では決して円安ではなかったもののドル円だけはドル高がドル円を円安方向に導いてしまったようです。

さらによく相場を見ると結局ドル円のショート勢が踏みあげられてストップロスを連発する形になってしまったようで、本番の雇用統計では予想数字より高いNFPが出ても一瞬111.600円の手前までは上昇したものの、さらなる上値を追う展開にはならずに値を下げる動きとなってしまいました。

ドル円雇用統計前後の15分足推移

結局、事前の2回の上値試しでほとんどのショーターのポジションがロスカットを食らってさらなる上昇の材料を失ったことが大きな原因で、このドル円の上昇も単なるショートカバーだったことが明らかになりつつあります。

実際、雇用統計後ロング勢が利確すると相場はそれだけで荷もたれを起こす兆候を示しており、週明けに再度上値を試しに行く展開になるのか、このまま荷もたれから110円台に押し返されることになるのかが注目される状況です。

ドル円はこうした動きを目の当たりにするケースが多い通貨ペアですが、インターバンクなのか短期のファンド勢なのかは不明ですが完全に仕掛けられた感が残ります。

週明けからのドル円の動きに大注目

111.750円には10億ドル程度のオプションも存在していることから112円方向に再上昇したとしても一気に112円を超えるのはかなり至難の技になりそうな状況です。

ここ半年近くは雇用統計の結果で劇的に為替相場が動くことは非常に少なくなりつつありますが、今回の雇用統計はかなり為替市場にとって、特に本邦の個人投資家にとっては特別なものになってしまったようです。

月初からこの動きに巻き込まれた方も多かったと思いますが、果たして週明けからはどのような展開になるのかに関心が集ります。

ちなみにこの時期シーズナルサイクルではドル円は決して大きく上昇を遂げるような時期にはなく、明確な理由が存在することが必要になります。