FRBメンバーの地区連銀総裁が私的に株投資を行って利益を得ていたことが一気に露見し、FRBの政策との利益相反の疑いが問題化しています。

問題になっているのはダラス連銀のカプラン総裁と米ボストン連銀のローゼングレン総裁で、双方ともに地区連銀の総裁、日本でいえば日銀の支店長のような立場にあるにも関わらず個人的に株式運用をして莫大な利益を得ていたことが昨年の取引の公開により露見しました。

各地区連銀の総裁が行う株式市場における個人投資については連邦準備制度の倫理規則が存在し、両氏ともにそれを順守して行っていると説明していますが、ここ10年以上のFRBの政策は従前からの雇用やインフレ対策を完全に無視して株価だけが下がらないようにすることを最重視した政策を続けてきたので、FOMCでのこうした動きをいち早く察知して地区連銀の総裁が自身の株の個人投資において爆益を出していたというのは個人の技量が伴うものとはいえ大きな問題であり、倫理上を超えるFRBとの利益相反を追及されても反論できない状況です。

取引実態が開示され窮地に陥ったダラス連銀のカプラン総裁と米ボストン連銀のローゼングレン総裁は保有する個別株を月末までに売却する考えを表明していますが、どの保有株も最も高い価格での売却になるのでたくさんの利益が手元に残り、今後はインデックスファンドか現金保有を示唆していますが、個別株を買わなければ良いということではなくなりつつあります。

話題のダラス連銀のカプラン総裁と米ボストン連銀のローゼングレン総裁 Photo Reuters

カプラン総裁は学者ではなくゴールドマン出身の投資のプロ

今回の投資実績の開示を受けて莫大な利益を獲得していることで有名になったロバートスティーブンカプラン・ダラス連銀総裁はハーバード大学の教授から現職についているので学究肌の学者というイメージが強いですが、実は元ゴールドマンサックスの金融マンで投資銀行部門の副会長にまで登りつめた人物であり、イエレン前FRB議長のような一貫した学究肌とは全く別で、政権の顔色を見ながら政策を決定するパウエルなどともかなり異なる存在であることがわかります。

これまでの民間企業での役職経験から相当な収入とそれに基づく投資原資を保有していることが窺われますが、ダラス連銀がホームページ上で情報開示している中身を見ると米国の一流株に軒並み分散投資をかなり大きな資金でおこなっており、ファンド顔負けの投資術を展開していることがわかります。

ここでやはり問題になるのが公的な立場との利益相反の問題で、自己利益のために政策に反対したり賛成してきたということが本当になかったのかどうかを証明することは誰にもできません。

今後のFOMCの政策決定に影響がでないかを注視

持ち株全部売却が決まったカプランは今頃になってパーティは終わりだなどと言い出しているようで、早くも自分の持ち株に影響がでなくなったことからか早期のテーパリング実施を声高に語るようになりました。

こうした発言もまた物議を醸しだし始めており、二人の連銀総裁の株投資でぼろ儲けの露見はFRBに対する市場の信認性にも大きな影響を与えることになりそうです。

さすがにこれを受けて9月のFOMCで早速テーパリング実施とはならないと思われますが、金融引き締めは株価にかなり大きな影響を与える政策なので、その政策事実を良く知る関係者が株売買に少なからずこの情報を利用していたというのはあまり印象が良くなく、表面上規約違反はないとしても地区連銀総裁が株の個人取引をしているということ自体違和感があり、当該案件がどこまで市場で引きずられることになるのかが注目されます。