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2月第四週の週末、ロシアのウクライナ侵攻開始で激しく下げた株、為替相場でしたが、首都キエフ陥落は時間の問題で意外に戦闘は早く終わる可能性がある、また3月中盤のFOMCで利上げを行う見通しのFRBも利上げのスピードを上げないのではないかといったかなり楽観的な見通しから、24日の相場の終わりと25日にはかなり大きな買い戻しがでて米株市場は一旦底打ちしたかのように見える動きとなりました。

しかし現実にはロシアはキエフを簡単に陥落することができず週末決着がつかず、2月28日ベラルーシ南東部でロシア、ウクライナ両国の代表団による停戦協議が行われました。

協議は実に5時間以上に及んだようですが双方とも一定の歩み寄りがあったことを示唆したものの、ロシアはウクライナの降伏と非武装化を求めているのに対し、ウクライナはロシア軍の無条件での撤収を求めており、今後開催される見込みの停戦協議でもそう簡単に決着がつかず、結果的にロシアが武力で押し切ってキエフ周辺で壮絶な戦闘が再開される危険性も十分に残っています。

ロシアの陸上軍は兵站がうまく機能しておらず、戦車や歩兵による攻撃よりもミサイルや空爆でキエフを陥落させるのではないかという見通しも出始めており、ここまでの被害よりもさらに大きなものになってしまうのではといった危惧も高まりを見せています。

EUはウクライナのEU加盟を受け入れることを示唆しはじめていますが、通常10年はかかる加盟が最短でどのぐらいで認められるのか、また加盟前にウクライナを始末してしまいたいロシアの思惑から戦闘がさらに激化する危険性もあります。

こうした一段と不透明な状況を受けて株価は上下動を繰り返しており、28日は月末ということもあって特別なリバランスや売られる株、買われる株が示現したようですが、米債は安全資産として一段と買われ金利は短期から長期まで大きく下落する展開となっています。

ここ数日のドル高はこうした米国の安全資産買いのドル調達が背景にある可能性も高まっており、これが3月相場でも続くのかが注目されます。

こうなると先週末時点でも妙に楽観的な市場の見立ては完全に崩れ、先行き不透明感が金融市場に再度広がりつつあります。

米国中心に西側諸国が打ち出した金融制裁の市場への影響も不透明

一時はドイツなどの反対で保留になっていたロシアのスイフト規制による制裁は結局欧州も承認して実施の運びとなっています。

結果ロシアルーブルは対ドル、対ユーロでも大きく下落しロシア中銀に対するSWIFT制裁もあって為替介入でルーブル安を止めることができない状況に陥っています。

Data Bloomberg

ロシア株相場は5日まで閉鎖ということでさらなる暴落を見ることはできていませんが、SWIFT規制は米欧でロシア企業と取引をしている民間企業にとっても相当な痛手となる可能性があり、為替市場はこの辺りをしっかり把握し相場に織り込むことが難しくなっているようです。

ただロシアはドイツと米国には天然ガスの供給を継続中という話も一部のメディアには示現しはじめており、SWIFTを使わないロシア独自のシステムないし中国が稼働させているシステム利用の決済といったものも急激に進みそうな状況です。

さらにロシアのウクライナ侵攻がはじまってから新興国通貨は相当な額がドルへと引き戻されており、この流れは当分止まらない可能性も出始めています。

足もとの金融市場の参加者の中心はすでにミレニアム世代以降が主流で、戦争相場の経験はプロもアマチュアもほとんどないのが実情です。

すでにリーマンショックやITバブルの相場も分からなくなっているので当たり前の話ですが、相場の先行きを誰も見通せない状況ではここから相場はさらに上下動を行う可能性も高そうで、決め打ちしないトレードを心がけることが重要になります。

今週はウクライナ問題に一定の道筋が見えないなかFRBパウエル議長の議会証言が行われるので、米国雇用統計もあって相場を動かす材料はかなり増加します。

突然の流れの変化が出る可能性には日頃以上の注意が必要でしょう。