ロシアのウクライナ侵攻の影響をもろに受けて、連日乱高下が続きかなり傷んだ相場になってきた為替市場ですが、11日の東京タイムに116.350円という5年2か月ぶりの高値を突破したドル円はロンドンタイム、NYタイムでも続伸し、ロンドンフィキシングをきっかけに117円台に上昇して117.300円レベルまで値を伸ばす展開となりました。

テクニカル的には116.350円レベルを明確に突破したことから短期の投機筋中心に買い上げる動きとなっていますが、この先はほとんどレジスタンスとなるものが存在しないことから118円という節目を超えればあっという間に118.600円レベルまで上昇する可能性がでてきています。

ドル円週足推移

有事のドル買い、FOMCの利上げ直前織り込み、実需の輸入勢の買いが推進力

この突然のドルの大幅上昇ですが、年初来116円台を明確に上抜けられずにレンジに逆戻りしていた状態が2か月近く続きました。
しかし年度末にさしかかったこの3月にようやく上昇に転じることとなり、テクニカル的にも買いとなったことが強烈な上昇を示現する様になりました。

またロシアのウクライナ侵攻に伴って有事のドル買いが明確になったこと、さらに週明けに開催されるFOMCでの利上げを改めて織り込んでいることも上昇を支援しているものとみられます。

さらに原油価格等の高騰で国内は大幅に貿易赤字が膨れ上がっており、価格上昇を比較的織り込みやすいエネルギー系の輸入勢がこのタイミングで積極的にドル円を年度末にむけて買い向かっていることは大きな支援材料となっているようです。

ただし、過去20年のドル円のシーズナルサイクルで見ると3月中盤輸出実需筋のレパトリエーションがあることなどもあって、一旦円高に動いてから月末に向けて上昇するのが定番の形となっています。
したがって週明けもそうした動きが果たして出るのかに注目していきたいところです。

また4月初旬以降は例年通りでいけばドル円が下落することになるので、あと3週間程度の期間でどれだけ上昇水準を上げられるのかが大きなポイントになりそうです。

短期4時間足などのチャートで見るとすでにRSIでもかなりいい線まで上げており、一旦リカクなどで下落して再度上昇に転じるシナリオも描いておきたいところです。

本邦金融当局の円安けん制発言にも注意

現状の117円、118円台は過去の相場から見ても強烈なドル高円安とはいえない状況ではありますが、実質実効レートベースで見るとすでに115円台でも実質305円と1970年代初頭の円安レベルを示現しているだけに、国内のコストプッシュインフレを考えた場合には日本政府もドル円の上昇状態を看過してはいられなくなるはずです。
また、日銀の黒田総裁が円安をけん制するような発言を繰り出した場合には逆戻りになる可能性も高く、ここからは相当注意が必要になりそうです。

日銀は実質インフレ率2%を大義名分にして金融緩和を続けていますが、原油価格の高騰に加え円安が加速すれば恒常的に2%を達成してしまうことになって政策の見直しを迫られることにもなりかねず、円安にブレーキをかけるような発言が出る可能性は高そうです。

戦争相場で想定外の事態が起きることも依然留意すべき

ロシアのウクライナ侵攻によるウクライナ国内での戦争状態はいくつかの停戦会合が開かれても結果的に進展する状況ではありませんが、相場は戦争起因の乱高下にかなり飽きが来ており、少しでもいい情報がヘッドラインに飛び出せば買い向かうという状況がかなり強まっています。

そういう面ではすでに下げにくい相場展開になりつつあることは事実ですが、逆に先般の原発攻撃など全く市場が想定していなかったような事態が勃発すればまたリスクオフの円買いが出る可能性も否定できず、急激なドル円の上昇はその都度逆戻りする危険性があることもしっかり認識しておきましょう。

足もとの相場はだれも正確な先読みができませんので、方向を断定することなく柔軟にトレードできる体制を整えることが重要になりそうです。

ドル円もさらなる上昇が高そうですが、いきなり戻りを試すことは想定しておくべき状況でしょう。