米株は18日のNY市場の大幅暴落に引き続いて19日にもさらに下落を示現する形となり、相場の様相は一変しています。

先週の下落はマージンコール相場など呼んでいましたが、今週は米国の景気後退懸念が鮮明になったことから連日の大幅下落となっており、18日などは戻る気配すらないままに一直線に引けまで下落を続けるという、かなりのセンチメントの悪化を示す動きとなりました。

18日のNY株式市場三指数終値
19日のNY株式市場三指数終値

数字上ではそれほど大きなやられにはなっていないように見えますが、実は暴落を知らない個人投資家たちがかなり酷い目にあっており、見かけ以上に相場は傷んでいます。

さすがに19日は18日のように劇的に下げる相場ではありませんでしたが、それでも三指数の株価は確実に下落しており、市場参加者が一息つけるような相場ではなかったことがわかります。

問題はこの動きがどこまで続くかですが、2008年のリーマンショックの場合一旦暴落してその後も長期に渡って株式市場が低迷しており、今回も同じようになるのかにも関心が集まっています。

完全に米株のあおりを受けたドル円がここからどこまで下押しするかに注目

ドル円1時間足

ドル円は5月9日に年初来高値の131.347円を付けましたがその直後に反落し、12日のロンドンタイムには一瞬127.510円まで下落する展開となりました。
しかし、米株の下落に伴うドル円の下落はそこがサポートラインになることはなく、19日のNYタイムではさらに127円台前半まで下落することとなっています。
瞬間さらに下抜けするのではないかと思われましたが、19日はなんとか株価のさらなる大暴落が抑えられたことから留まって引けています。
ここから127円を抜けるとここ3か月近く上昇した相場に完全な一服感が出ることになり、さらに黒田シーリング水準とされてきた125.860円を下抜けるとかなり相場の風景が変わることが予想されます。

ただし、米国FRBはここから粛々と利上げを行うことを表明しており、6月にはバランスシートの縮小も開始されるため、米10年債利回りは一時的にせよ4%を超える可能性があり、中期的にはまた円が売られる時間帯が戻ってくる可能性が高くなるので、どこで反転上昇する相場に回帰するかにも注目しておきたいところです。

米国はリセッション入り確定か

これまで株価が大幅に下落すると、パウエルプットなどと呼ばれるFRBの緩和策が突然登場して相場を支える動きをしていましたが、今回FRBは米国の中間選挙を前にしてインフレを沈静化させることに重点を置いていることから、株式市場が大幅下落したからといって簡単に利上げを中止するわけにはいかない、といった点が大きな違いとなっています。

イエレン財務長官はPPT・プランジプロテクションチームを集合させて株価を買い支える動きを発動することが可能ですが、今回のようなセンチメントの悪さでは下落を止めることはできても、再度持ち上げられるかは疑問が残り、バイデン政権とFRBがはたしてどのような手を打ってくるのかが注目されます。

市場ではとうとう米国がリセッション入りするのではないかといった悲観的な見方も米国の市場アナリストを中心に出始めており、ここからの株価動向が非常に大きな関心を集めることになりそうです。
このままリセッション入りした場合、経済も金融市場もハードランディングに見舞われるリスクがかなり高くなり、市場参加者の不安はさらに高まります。

ウォーレンバフェットが強気転換したという誤報が走る金融市場

Photo Bloomberg

この大幅下落相場に、あのバークシャーハザウェイのウォーレンバフェットが強気に買い向かっており、いよいよ相場が底打ちするのではないといった楽観論が金融メディアを中心に駆け巡っています。

たしかにバフェットはかなり短期間に大量の株買いをしているようですが、購入した銘柄の中身を精査してみると、バフェットが購入した株の5分の4は石油関連、エネルギー株に集中しており、ごく近いうちに到来するであろうインフレに対するヘッジ策を強めたもので、すべての相場全体に強気に動いているわけではないことが見えてきます。
また将来的にドルが弱含むことも見越して、こうしたインフレヘッジの株買いをしているのはどうやら間違いないようです。

これだけ株式中心に相場が下落しているので、バフェットの眼力にすがりたいと期待する個人投資家が多いようですが、実はそうした動きではないことはあらかじめ理解しておく必要があります。

バフェットがすでにインフレ対策を考慮しながら投資を始めている点は非常に興味深いポイントとなっており、足もとの相場の下落に一喜一憂するのではなく、本質的な分断投資をどう成功させるかを真剣に考える時間帯に入っています。

いずれにしても株も為替も取引はかなり難しくなっていますので、過分なリスクをとらないトレードを心がけましょう。