本邦でもいよいよ秋が深まり朝晩は寒い日が増えていますが、欧州では北欧、中欧を中心としてさらに冬へと季節がシフトしはじめており、いよいよエネルギー問題が各国の国民にとって相当深刻な事態になってきているようです。

パイプラインが破壊されたということでロシアから供給されるはずの天然ガスが枯渇し、他国から代替的に高いコストで買入れをしていますが、それでも十分な供給が確保できない状況に陥っているようです。
さらに深刻なのはガソリンの供給問題で、欧州広範に市民が車用のガソリンを思うように確保できないという問題も顕在化しています。

上の地図は欧州圏全体のガソリンの供給状況を示したものですが、すでに欧州圏全般で10月のガソリン供給に支障がではじめており、特に中欧諸国は相当深刻な状況が続いていると言えます。
またイタリア等もそれに次いだ不足状況が出始めているようで、景気と市民生活に与える大きな影響が懸念されるところです。

地図上では薄いピンクで不足レベルは低いとされているフランスでも、すでに全土のガソリンスタンドの2割にガソリンが届かないという日本の70年台の石油ショック、あるいは2011年の東日本大震災後のロジスティックス破壊によるガソリンスタンドへの供給停止のような事態に陥っているようで、現実の状況は我々が眺めているよりも遥かに深刻です。

NATOからの脱退やウクライナ支援を否定する市民も登場する始末

このエネルギー不足の問題は、端的にいえばロシアとウクライナとの戦争によって引き起こされたものですが、戦争開始当初は人道的な視点からウクライナを支持する欧州圏の市民は非常に多かったようです。
しかしいよいよエネルギーが枯渇し、供給されてもその価格が高騰しているためまともに利用できないという現実に直面したことで、多くの市民がウクライナ戦争にこれ以上付き合いきれないと思うようになっているようで、フランスなどではすでにNATOから脱退すべきといった過激な発言とデモをする向きも登場しているようです。

ロシア起因のエネルギー問題が大きなものになると、なぜ欧州圏の国民が悲惨な状況に巻き込まれなくてはならないのかという不満が高まることになり、EUとしての結束も危うくなることが予想されはじめています。

欧州各国のNATOでの結束力が維持できるのかも大きな問題

今後ロシアが本当に威嚇の核攻撃などを持ち出してくるのかは我々個人投資家には全く予測できませんが、ひとたびそうした動きがでてくればNATOとロシアの戦いになることは間違いありません。
足もとでウクライナとロシアとの間で行われている報復合戦がさらにエスカレートし、NATOがロシアを空爆すれば相当数の核ミサイルが欧州各国に着弾し、さらに報復の核攻撃がNATO側から加えられることになればどこかのタイミングで米国も加担する可能性があるとされています。

専門家による予想では核戦争が開始されてからたった4時間ほどで数千万人の死者のでる過去にない大惨事に発展する可能性があるとされており、本当に双方で核攻撃が行われることになれば投資どころの騒ぎではなくなりそうです。
しかしそれ以前の状況でウクライナではなくNATOがロシアと対峙することになった場合、現状のNATO加盟国が結束してロシアに対応できるのかという問題もでてきそうで、欧州圏はこのエネルギー不足の問題をきっかけに軍事的にも大きな問題が出てきそうな状態になってきています。

エネルギーがうまく供給されなくなれば欧州圏のほぼすべての国が経済的におかしくなるのは間違いなさそうで、とくに市民生活のみならず製造業などの産業がかつてなかったほどのダメージを受けることが危惧されます。
こうなると株や為替にすさまじい影響がでるのは必至であり、ユーロがさらに激しく売込まれることも十分に考えられ、ここからのこの地域の経済状況の変化には相当注視する必要がでてきているため楽観視は禁物の時間帯に突入しています。