10月3週は週初からドル円が上伸を継続し150円突破も時間の問題とみられていましたが、大方の予測どおり20日のロンドンタイムに150円を上抜ける展開となりました。
ただストップをつけて150.090円レベルまで上昇後は、即座に30銭程度叩かれて値を下げるというかなり特殊な動きを示現することになり、通常のやり方とは異なる財務省の為替介入がでていることを思わせるような展開となりました。

ロンドンタイムの残りの時間は149.600円割れまで下げる場面もありましたが、その後NYタイムではじり高を継続し、とうとう150円を明確に突き抜け150.210円超レベルまで値を上げる動きとなりました。

Data Tradingview

財務省・日銀はステルス介入しているかわからない状態

節目である150円を超えたことから、市場ではこの先どこまでドル円が上昇することになるのかが大きく注目されはじめていますが、この節目を財務省・日銀は明確に食い止められなかったことからさらに相場が走る可能性も高まっており、折角の9月22日の介入も水泡に帰す形になりかねない状況に陥りつつあります。

今回財務省は小出しのステルス介入に終始し始めているように見えますが、市場にはそれが断固とした姿勢には映っていないようで、米10年債利回りはエレベーターのように上昇を始めているため全く打つ手がないまま160円に接近する事も想定されはじめており、ここ数日の金融当局の対応が一段と注目されはじめています。
NYタイムではすでに米10年債は4.2%超を示現しているだけに、もはや一国が単独の為替介入を行うことで部分最適をはかることは不可能な領域に入りつつあります。

Photo Reuters

神田財務官は介入原資は無限大といった発言をしていますが、それが上昇を抑止させるような効果は全く認められず、92年のイングランド銀行の敗北を彷彿とさせるようなドル高円安となることも想定せざるを得ない状況です。
このまま150円台でも明確な介入を行わなかった場合、かなり投機筋になめられた対応を受ける可能性もあり、財務省の介入姿勢もドル円上昇の大きなリスクが潜んでいることがわかります。

11月相場はドル円上昇要因も豊富

週明けは10月最終週となり11月相場はすぐそこまで迫っていますが、11月3日午前3時に発表になるFOMCではすでに市場も75ベーシスポイントの利上げを完全に織り込んでおり、むしろ12月がどうなるかに注目が集まりつつあります。
この内容次第ではドル円はさらに上昇することが予想されています。

また、次週の11月8日には米国中間選挙を控えています。
例年中間選挙後は結果がどうであれドルが上昇するのが常となっているため、ドルがさらに上昇する材料は目白押しの状況です。
さらにシーズナルサイクルでいうと、10月末からドル円は12月中旬まで実需のドル買いの動きなどに支えられて上昇しやすく、これも上方向へ動く材料となりそうで、どこまで上昇できるのかが気になるところです。

ここまでの3か月あまりは月間で平均して3.5円程度の上昇となっており、下手をすれば160円に限りなく接近して年内の相場を終了することもあり得るので、本邦金融当局にとってはかなり苦しい2か月間となるでしょう。

ここからの下落要因として不安視されるのは米株の大幅下落

こうしてみるとドル円は年末に向けて確実に上昇してしまいそうですが、日本の当局が少しでも利上げに近い政策へと変更した場合、例えばイールドカーブコントロールの上限金利を0.1%上げただけでも一転して円高に振れる可能性があります。
また、ここから米株が想像以上に大幅下落となった場合には市場は全部売りに見舞われることになるためドル円も当然下落し、これまでの相場の流れは一変することが予想されます。

足もとの相場はすでに8月末から9週の連続陽線での上昇を示現しているので、相場自身が自律的に調整局面に入ることも考えられますが、下値では相当な買い意欲があることもまた事実となり、大きな下げを期待するのはかなり難しそうです。
現状では147円を割れ始めるとそれなりの値幅の調整になりそうですが、引きでみた場合140円を割るといったようなトレンド転換の下落にならないかぎり、年末に向けては再上昇をすることは覚悟しておかなくてはなりません。

いずれにしても相場の先行きは誰にもわからないことなので、妙に断定してトレードすることのないように気をつけたいところです。
ドル円は年初からすでに36円も上昇しており、ファンダメンタルズの材料を考えなければかなりいい線まで上昇しました。
上下どちらに動いても柔軟に対応できる準備をしておくことが、年末までの相場では一番重要になるのではないでしょうか。