米国ではビッグテックの経営者が賃金の代わりに会社から供与される持ち株、いわゆるストックオプションを大量に購入することは日常茶飯事になっています。


ビジュアルキャピタリストがまとめたこの表では2021年上半期におけるアップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなどの経営者の売却が示されていますが、実は今年の感謝祭前にマイクロソフトのナデラCEOは持ち株半分を高値で売り抜けたことが現在大きな話題になっています。

同氏は保有株の半分にあたる83万8600株を11月22日と23日の2日間に渡ってかなりの時間をかけて完全に売却しており、税制上の問題からこの売却を行ったことを説明しました。

しかし感謝祭後の26日にはNYダウは905ドルもの暴落に直面しており、偶然といえどもあまりにもタイミングよく売却、しかも半分というかなりの額に及んでいることに市場では詮索が始まっています。

また税金の支払いを理由に自社株を売っていたイーロンマスクもこの1か月で100億ドル以上のテスラ株を売り抜けており、こちらも暴落の前に売却は完了しています。

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この売却タイミングの良さは奇跡的なものと言っても過言ではなく、オミクロン関係でなにかインサイダーの情報でもあったのではないかと勘ぐりたくなるのもわかります。

真偽のほどは全く闇の中ですが、果たしてこれは偶然、ラッキーな売却だったのでしょうか。

それとも何らかのインサイダー情報を得たからこそ慌てて売却したものなのでしょうか。

疑惑はまったく解消されないままです。

ファンド勢は株式から撤退し残るは個人投資家ばかりなりの米国市場

こうした動きにまるで連動するかのように米系のファンド勢は株式から相当な勢いで撤退をはじめており、市場で大きな地位を築きつつあるのがロビンフッダーに代表されるような個人投資家となっていることがわかります。

彼らは個々の取引は少ないものの、すべてレバレッジをかけたCFDで取引しており集中して特定銘柄に買い向かうという特異なトレードを行うので、ファンドの取引とは全く異なる相場の動きがでており、長く相場にいるトレーダーにとっても非常に驚異的な存在になっています。

ただ、今回のマイクロソフト経営者の大量持ち株処分に見られるようにここからの株式相場に大きな調整リスクが迫っていると感じている参加者が多くなっており、インサイダー情報が出回っているのかは定かではありませんが、年末から来年にかけてなんらかの想定外な下落が起きる危険性は相当意識しておいた方が良さそうです。

冷静に見ても上げ過ぎの米株相場

このコロナ禍でも米株はハイテク中心に異常とも思える上昇をみせてきており、リーマンショックから12年半上げっぱなしの状態で暴落には見舞われていないので、相応の調整下落が到来すると考えるのはそれほど珍しくはありません。

蒸し返しになりますがこうした視点で相場を見た時に、株価的には順風満帆といえるマイクロソフトにおいて現役CEOが持ち株の半分を慌てて売却したという話は引っかかるので、ファンド勢が相当警戒し始めているのもよく理解できます。

インフレ、利上げが起きれば株価は必ず下落するものなので、FRBがテーパリングをはじめ、やがて利上げに着手することは長年続いたパウエルプットの終わりを強く印象付けるものになっており、市場が過度に心配し始めています。

実際には相場がここからどうなるのかはまだ誰にもわかりませんが、12月3日に起きた今年最大の暴落が最後になるとは言えません。

米株相場は3指数ともに大きく値を戻してはいますが、これが本当にここから続くのかについてはかなり疑問の声も聞かれるようになってきています。

相場暴落の予知というのはこれだけ多くの市場参加者がいてAIなども実装されているにも関わらず、地震と同じぐらい正確に出来ません。

ただ自然減少と異なり人がしている相場なので必ず何か兆候が現れるのもまた事実であり、我々個人投資家としてはそうした小さな兆候をいかに見逃さないかが相場で生き残る大きなポイントです。

そういう意味ではこうしたビッグテックCEOの持ち株売却をどう見るのかは結構大切な取組みとなるのかもしれません。