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12月13日、米国下院委員会でFTXの創設者兼元CEOサム・バンクマンフリード・通称SBFが公聴会に参加し、FTXの崩壊について証言することについに合意したことから市場の関心が集まることとなりましたが、一転して不参加を表明した直後、今度は米国当局の要請を受けてバハマ当局が逮捕するという展開になりました。

SBFがとうとう逮捕されたことで今後米国が同氏の引き渡しをバハマ当局に求めるものと思われ、詳細な取り調べが米国内に移動して行われFTXに一体何があったのかが明らかにされそうな雰囲気が漂っています。
SBFは11月に誰かを騙そうとしたことは一度もないとメディアのインタビューに答えていましたが、ここからは意図的な不正があったのかが大きな捜査のポイントになりそうです。

米国連邦政府がSBFの電信送金や銀行詐欺の容疑を追及することになれば仮釈放なしに一転して終身刑になる可能性もあるようで、いきなり天国から地獄へと状況は変化しています。
FTXの破綻以来仮想通貨市場は日本円にして25兆円もの時価総額が失われることとなったためFTXのネガティブ効果は想像以上で、捜査内容次第ではさらに大きな問題になることも危惧されはじめています。
今は逮捕されたばかりなので、当局の調べで詳細が明らかになるのを待つしかないのが現状です。

そもそも米国でBTCを買って日本で売ることでアービトラージから財をなした人物

バンクマンフリード・SBFはアジアと米国における仮想通貨ビットコインの価格差、つまりアービトラージを利用して財を成すことに成功しており、とくにアジア圏では日本でビットコインを売ることで売れば売るほどその差益が積みあがるというかなり単純なビジネススキームだけで3兆円近い長者への階段を登ったとが知られています。

2017年には仮想通貨投資企業であるアラメダリサーチを開業、その後追いかける形でFTXを設立し利益の源泉となった日本にもいち早くその法人であるFTXジャパンを設立しています。
しかしそこから独自のFTT(FTXトークン)を発行しはじめたあたりから同社の投資は滅茶苦茶なものになり、投資家から集めた金を信託保全で別管理することもなく、適当にSBFの都合で投資資金として回転させていたことが明るみに出始めています。
結局これが破綻寸前でもほとんど企業内に資金が残っていなかった大きな理由で、さらに残された資金も内部の人間が適当にどこかに逃がしてしまったことも指摘されはじめています。

こうなると表向きは取引所を装っていましたが最初からポンジスキームに過ぎなかった可能性も高まり、SBFの容疑がどんなものになるのかにも市場の注目が集まります。

残された取引所の最後の砦バイナンスもさほど公明正大な企業ではないことが露見

仮想通貨市場で最大手のバイナンスがどういう状況であるのかが相場の先行きに大きな影響を及ぼすことになりそうですが、FTXのように最初から事業として滅茶苦茶な状態ではないものの、ウォールストリートジャーナルが会計事務所に相談しながら行った調査では内部統制の質やバイナンスのシステムがどのように運用されているかに関する情報は相変わらず開示されていないのが実情で、とくに企業構造が複雑であることには関係当局も大きな関心を寄せているようです。
業界第一位の取引所におかしなことが露見しないことを祈りたいところですが、既存のレガシーな金融機関などと違って本来法人をわけて管理運営すべきプロセスをひとつの取引所が受けて立っているのはどうやら事実のようで、とりわけ顧客の仮想通貨資産を貸し借りするというスキームは通常の銀行業務とは全く異なるプロセスであるだけに、ここに決定的な問題が生じることになればFTX同様深刻な事態に陥ることが予想されます。

またバイナンスの場合いくつもの国を跨いでビジネスを行っていることから、微妙に異なる各国金融当局の規制に常に準拠していくというのは相当な労力を伴うものであるだけに、こうした取引所の事業形態がそれを常に正常な状態に維持できるのかにも大きな疑問が生じます。

本来個別の仮想通貨は取引所に問題が生じても一緒にずるずる値を下げるような存在ではないはずですが、この業界に限っては取引所のビジネスに決定的問題が生じれば扱っている仮想通貨も一緒に相場の暴落に巻き込まれるのはほぼ間違いなく、ここからの仮想通貨取引、特にレバレッジをかけた仮想通貨FX取引については日頃に増して慎重なトレードが必要になってきそうです。
海外FX業者での取引の場合最悪の事態に陥っても一応ほとんどのところがゼロカットシステムを導入しているので、まさかの場合でも追証を求められないのはかなり安全といえますが、失ってもいい金額だけを上限にして管理するといった工夫も必要になるでしょう。