市場が年内最後の大相場になることを期待して注目した米国の11月月次CPIの発表と、12月のFOMC政策決定会合の結果発表ならびにパウエル議長の記者会見でしたが、事前想定ほど荒れることもなく無事通過してクリスマス明けまでは相場が動かなくなりそうな状況が高まってきています。
ここからの相場で注目されるのは米国のリセッションの行方ということになりそうで、それ次第ではまた新たな荒れ相場が展開しそうです。
11月CPIでドル円は大きく下落
13日に発表された米国の月次CPI・消費者物価指数は前月比上昇率は0.1%と予想の0.3%より低く、前年比上昇率は7.1%と昨年12月以降で最低の伸びにとどまったため米株は大きく上昇しましたが、ザラ場でほとんどの上昇の値を消すというかなり神経質な展開となりました。
ドル円は137円台でこの発表を迎えましたが弱い内容を受けて大きく下落し、日本時間の23時には134.640円まで押し込まれる動きとなりました。
ただそこからさらに深ぼりする動きは結果的にはあまり見られず、134.500円以下を割り込むような形にはならずにFOMCを迎えることとなりました。
今週はメインイベントがあるとはいえ市場参加者が減っており、短期の投機筋とアルゴリズムが徘徊する相場が続いてしまったようです。
単月のCPIのピークアウトに注目する市場参加者はすでにインフレが後退しつつあるのではないかといったかなり楽観的な予想をしていたためドル円は瞬間大きく売られることになりましたが、その先FOMCに向けて新たにポジションを仕込む向きもおらず、下落した相場は135円台中盤でFOMCを迎えることになりました。
FOMCの結果は概ね市場の事前予想どおりだがターミネーションレートは5%超へ
FRBは今回開催したFOMCにおいて金利目標レート・FFレートを市場の事前予想どおり0.5%利上げして4.25~4.50%としました。
この水準は2007年以来のものでかなり高水準に達しています。
それよりも市場に影響を与えたのは2023年のドットチャートで、19人の委員による政策金利見通しでは2023年末の政策金利が9月公表時点の4.6%から5.1%に引き上げられたことです。
9月時点では18人が4.25-5.00%と予想していましたが、今回は5.00-5.25%と予想する委員が10人でもっとも多く、5.25-5.50%が5人、4.75-5.00%と5.00-5.75%がそれぞれ2人となり全体に上方向にシフトしたことが鮮明になりました。
今回発表された声明では前回会合時と同様、2%上昇の物価目標と雇用の最大化のために引き続き利上げの必要性を改めて強調していますが、ここまで急速に利上げを行ってきた結果がインフレに与えるまでに時間がかかることから時間差を考慮することも指摘しており、来年以降は若干利上げペースが穏やかになることも示唆しています。
米系の金融機関のアナリストはすでに2023年後半にFRBが利下げを決定すると予想しはじめていますが、今回の会見で利下げを問われたパウエル議長はインフレ率が2%に終息するために全力を尽くすのみで現状で利下げの具体的な数字などは考えていないと発言し、金利の上昇が市場の想定以上に長引く可能性も明らかにしています。
来年2月までFOMCは開催されないので利上げを巡る相場の動きは一段落ということになりそうですが、ここから先はリセッションの到来に対するリスクも市場に加わることになりそうで、相場の動きはさらに複雑化が予想されます。
米債金利は完全に逆イールドが定着でリセッションリスク上昇中
リセッションを占うひとつの指標として市場で広範に注目されている米債の逆イールドですが、すでに1か月前から明確な逆イールドが示現しており、直近では金利自体のレベルは下がっていますが、逆イールドの形状はさらに厳しくなていることがわかります。
一般的にはFRBが短期金利を緩めるような動きにでてイールドカーブがスティープ化、つまり長期の金利が上昇する形に戻る途上で激しい株式相場の下落に見舞われることが多いことから、ここからの相場には相当な注意が必要になります。
とくにFRBはリセッションが顕著な状況になるとインフレ対峙を止めるのか、並行してオペレーションを行うことになるのかは相当大きな市場の関心事で、そもそも二頭を追うような形で本当に成果がでるのかという疑問も高まっています。
そもそもFF金利が10年債利回りを超えてくることになると大体の場合相場暴落が起きるとされており、現状はまさにそれにあてはまるところに来ています。
ですので既にこの年末から来年早々の相場でそうした不測の事態が起きる可能性についても覚悟しておく必要があるでしょう。
相場は一旦なにもなければクリスマス明けまで小休止となりそうですがその後の動きは決して平たんな道のりではなさそうで、山あり谷ありを進んでいく覚悟が求められるようになってきているようです。