5月後半に入ってから3万円台に返り咲いた日経平均はその後押しも作らぬままに、すでに6月第三週段階で3万4000円に接近するような動きを見せています。
89年末のバブル相場の終わり以降33年以上経過してようやく値を戻している状況なので、果たしてここからどこまで上昇できるのかが大きな関心事になってきていますが、この相場はかなり特徴的なものがあり、80年代後半に暴騰した当時のバブル相場とはかなり状況が異なるものとなっています。
チャート分析からするとまだまだこの上昇相場は続きそうにみえますが、どこかで上昇が終わりを告げるのもまた事実で、下落がはじまるとそれなりの注意が必要になってきそうです。
現在の上昇はすでに2013年のアベノミクス相場の上昇を超える期間と上昇率になっていますが、さすがに6月第四週になってからは週明けから下落が始まっており一息つきそうな状況を示現しています。
これがそのまま大きな下落につながるのか持ち直すのかはまだよくわかりませんが、とくに半期末の決算が近づく6月末にはそれなりのリバランスも出そうなので、流れが変わることも十分に視野に入れなくてはならない時間に差し掛かってきています。
今回の相場上昇要因は意外に簡単な構造から発生
今回のこの日経225の暴騰相場に関しては様々な理由が市場に飛び出しはじめていますが、日銀が主要国の中で一国だけ変わらず緩和を続けている中で円安が進行し、海外勢が資金を投入しやすくなっていることがまずその背景として挙げられます。
そこに日本の金融庁の指導のもとに東証がPBR1倍以下をなんとかしろと通常の資本主義の取引所ではありえないような指導を行ったことから、多くの上場該当企業がとりあえず自社株買いに走っていることも下値を支える動きになっているようです。
またウォーレンバフェットがわざわざ来日してまで日本株に投資をしたことも海外のファンド勢に相当影響を与えたようで、こうした材料が揃った中で海外勢が大挙して日経平均価格に寄与度の高い株から買上げて行ったことから、3万円を越えた相場は先週まで全く押し目を作らずに上昇を続けてきており、ここからよほど弱含む展開にならないかぎり3万円を下抜けるといった大幅下落の展開はなかなか現実のものにならない可能性が高まってきています。
いずれにしてもこの暴騰相場ではすでに売りが激減しており、海外勢が買いにさらに資金を入れてくればまだまだ上がる可能性がありそうですが、一転して何かの材料に起因して急激に値を下げる動きになった場合には上昇が加速度的であったたけに下落も驚くほど早くなりそうで、ここからは下落についても十分に意識する必要がでてきています。
円キャリートレードの巻き戻しがドル円にもっとも大きな影響を与えることに
今回の日経平均株価指数の爆上げは為替市場からみると隣の芝生のように考える方も多いと思いますが、この株上げでは海外勢主体で相当な円キャリートレードが実現しているのは間違いないようで、その巻き戻しが一気に起きた場合にはドル円は一転して下落に転じることがあることは相当強く意識しておきたいところです。
足元では142円を超えて昨年同様150円方向にどこまで上昇するのかを市場は気にしはじめていますが、株の一旦の上昇終了とリカク、レパトリでの本国への資金回帰が進めば大幅に円キャリートレードの巻き戻しが始まる可能性は高くなりそうで、上昇から一転して下落のリスクもあらかじめ想定しておきたい状況です。
また、6月末は米国を中心として2023年の半期末決算にあたるため機関投資家やファンド勢のポートフォーリオ投資におけるリバランスも出やすく、とくに日米株共に大きく上昇しているので持ち株が売られる可能性は著しく高まることになります。
円キャリートレードの巻き戻しが集中すれば1円2円といったレベルではないほど円高が進むリスクも高まるため、上下双方向に動きがでることを想定して取引を行う必要がありそうです。
足元の株上昇は80年代後半のバブル相場とは大きく異なる
すでに市場では日経平均はバブル相場に突入し10万円も夢ではないといった予想も出ていますが、上述のようにこの相場の上昇は日銀の緩和継続下で円安が支えとなり米株だけに投資してきた海外勢が日本株にも食指を伸ばしてきたというのが現実で、87年から89年末までのように景気が実際によくてバブル経済になりそれと連動するように株も上昇したという相場の動きとは全く異なるものであることを認識しておく必要があります。
企業決算も景気もそんなに良いわけでもないのに思いきり株価だけ上昇した相場は意外に短期に終息する可能性が高く、海外勢が資金を引き上げ始めるとあっという間に株価バブルも終わり、とうとう日本株の時代が来たという言葉もあっという間に終わることになる点には相当注意すべき時間帯になってきています。