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AI市場への期待から、ここ最近、米国AI関連企業の株価急上昇のニュースがメディアを騒がせています。

足元で資金の投資先は特定の銘柄に集中しており、当該企業の株価は過去に例を見ないほどの高水準に達しています。

AIという明確な実態を持つ市場を反映した相場だから問題ないという市場関係者もいますが、その集中度合いは激しさを増しているため、今後は想定外の相場変動に備える必要がありそうです。

米株への投資資金はNVIDIA含む5社に集中

直近の米株の大幅上昇は、間違いなくNVIDIAがけん引していると言うことができます。

NVIDIAを含む下表5社の時価総額は驚くべき額に達しており、その過度な集中が気になるところです。

先日、最新の四半期決算を発表したNVIDIAは、翌23日のザラ場で前日比5%超の上昇を記録し、2兆ドル超の時価総額を達成しています。

これは、マイクロソフトやアップルに次ぐ3番目の規模であり、チャートを見ると短期間で急速に上昇していることがわかります。

この5社だけでも、米国株式市場全体における37%を占めており、特定銘柄が相場の拡大と価格の維持に大きく貢献していることがわかります。

 

Data MarketWatch

 

NVIDIAの時価総額の規模を把握するためには、世界の主要な株式市場の時価総額を比較するとよくわかります。(下表参照)

NVIDIAは一社だけでも、ロシア、韓国、オーストラリアなどの市場を上回り、メキシコ市場とほぼ同等、日本市場の半分に迫る規模となっています。

Data MarketWatch

 

世界を代表する大手企業であるとしても、一社だけでここまで急速に拡大し市場に大きな存在感を放つ企業は他にありません。

NVIDIAが中堅国の株式市場や市場全体に与える影響は非常に大きいため、ビジネスが順調に拡大している間は良い方向に作用しますが、ひとたび逆風となれば株式市場全体を吹き飛ばすほどの悪影響を及ぼす可能性があります。

2000年のITバブルの際にも、新興企業が急成長し株式市場を席巻したという事例があるため、市場が急速に変化しやすい状況にあることは認識しておく必要がありそうです。

現在、日米のような株式市場では、特定の株価が急落するとサーキットブレーカーが一定のレベルで作動し、一日の大幅下落がある程度制限されます。

しかし、特定銘柄が著しく急落する場合、市場参加者が従来の相場では見られなかったような狼狽を引き起こし売りに向かい、その結果相場全体が下落に向かうことが考えられます。

したがって、相場の下落は上昇よりも明らかに大きな問題を引き起こす可能性が高いと言えます。

いずれ訪れるAIブームの終焉に警戒

スマートフォンなど普段の生活でも身近になりつつあるAIのブームは、今後もまだまだ続きそうであり、AI関連技術の需要もしばらく減少するとは考えにくいため、NVIDIAの先行きも決して悲観すべき状況ではありません。

しかし、ブームはいずれ去り過熱した需要が沈静化する時が訪れることは確かであり、その時にNVIDIAのような存在感のある企業や市場にどのような影響が及ぶのかが気になるところです。

インターネットの発達により、誰でもリアルタイムで簡単に多くの情報を入手できるようになったことにより、金融市場には今までにない相場変動が顕在化する可能性があります。

特に、NVIDIAを代表とするAI関連企業の驚異的な株価の上昇は、プロトレーダーでも経験したことのないような想定外の動きを見せる可能性があるため注意が必要です。

こうした状況をAIバブルと呼ぶのが正しいかどうかは議論の分かれるところですが、株式市場は現在、誰も足を踏み入れたことのない状況に突入しており、相場の崩壊に遭遇する可能性もあるため、いつも以上に慎重な判断が必要とされそうです。