NVIDIAの最新四半期決算の結果を受け、米株は史上最高値を更新しています。

AI関連の特定銘柄における急騰が金融市場全体を牽引するという状況は、一定のリスクを伴いますが、チャートを見る限りこの上昇相場はまだまだ続く可能性がありそうです。

これまでこの市場に参加できなかった個人投資家たちが、この流れに乗り遅れまいと必死で追いかける結果、相場を押し上げる大きな要因となっているようです。

 

 

そんな中、米国を代表する大手企業の設立者やCEOクラス、いわゆるインサイダーがこのタイミングで一斉に持ち株を手放す動きが顕在化し、市場の注目を集めています。

大手企業の経営状態や将来の景気動向について、誰よりも詳しい立場にある彼らが、史上最高値を更新する株式相場において、持ち株を売り抜けることは決して偶然ではないことが窺われます。

特に市場で影響力の高い企業のCEOが積極的に自社の持ち株を売却し始めているとなれば、簡単には見過ごすことができない状況であり、彼らの売却目的が気になるところです。

アマゾン、メタ、JPモルガンのインサイダーらが相次ぎ持ち株を売却

アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏は85億ドル相当の持ち株を売却しており、メタのマーク・ザッカーバーグ氏は4.28億ドルを売却しています。

また、JPモルガンのCEOであるジェイミー・ダイモン氏も1.5億ドル相当の自社株を売却しています。

現役CEOの場合、報酬の大部分がストックオプションで支給されるため、一定のタイミングで自社株を売却することは良くある話であり、創業者であっても株価の高値で持ち株を売却しようとするのは自然なことと言えます。

しかし過去の株式市場では、こうしたインサイダーが持ち株を一斉に売却した後に、一定の株価下落が見られることが多いのも事実であるため、この事態を詮索する市場参加者が増えつつあります。

 

自社株売りが話題となっている3人のインサイダーたち

 

会社の経営状態を最も熟知したCEOによる自社株売却を不安視する声も

至極当たり前のことですが、企業におけるCEOレベルの役員は自社の経営状況や将来の見通しについて最新情報を保有しているため、株価がまだ上昇すると判断する場合、自社株を簡単には売却しないであろうという考え方があります。

また、暴騰相場の中で主役的な地位にある企業のCEOが、積極的に自社株を売却する行為には疑問が残ります。

インサイダーであっても、このタイミングで持ち株を売却するということは、背景に何か隠された事実があるのではないかと勘ぐってしまうのは、やむを得ない状況と言えます。

企業成長のピークと株価のピークは必ずしもシンクロするとは限らないという現実

2000年に米国でITバブルが発生し、多くのスタートアップ企業の株価が急騰した際、証券関係者やスタートアップビジネスのCEOたちは、IT革命による株価の急上昇は当然の帰結であると自信を持って主張しました。

実際にIT業界の市場規模は、その後も長期にわたり拡大しましたが、NASDAQ株価などのIT業界の株価は、暴落後に元の水準に戻るまでに17年の歳月を要しています。

つまり、業界全体やその中のリーディング企業が経済の中で持続的な成長を遂げても、株価がそれに追随するわけではないということです。

企業が破綻しないにしても株価が急激に下落するという事態は、過去20年近くの市場において頻繁に発生しています。

したがって、企業経営と株価の動向の両面を把握している創業者たちの多くは、企業成長のピークと株価のピークが必ずしもシンクロしないことをよく理解しているため、株価が高値水準にある場合は積極的に利益確定を図る傾向にあります。

もちろん、CEOら経営陣は今後の経営状況についても情報を保有しているため、状況に応じて持ち株を売却するという選択肢を選ぶ場合もありますが、株価を通じて外部から企業を評価する立場の者にとっては、CEOらによる自社株売却は企業の先行きを不安視する材料のひとつになります。

ただ、ひとつだけはっきりしていることは、まだまだこれから上昇するであろう自社株を積極的に売り抜けるCEOは存在しないということであるため、自社の経営状態にもっとも精通するCEOクラスによる持ち株の売却は、利益確定の一つの指標として機能しているということを意識しておく必要があります。

米株の高値更新が続く中、一斉に持ち株を手放す動きが今後さらに加速していくのかどうか、引き続き警戒が必要な状況です。