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1月1日午後4時過ぎ、石川県能登地方で発生した最大震度7の大地震により大きな被害が出ています。

その後も余震が続いており、一部の地域では1.2メートルを超える津波が観測されました。

この地震の影響により、相場はリスク回避で円安ドル高が進む展開となっています。

東日本大震災では円高、今回は円安にシフトしたドル円

2011年の東日本大震災では、日本勢が海外資産を売却し資金を国内に還流させる「レパトリ」が起こるのではないかとの見方から、急激に円高が進行した経緯があります。

そのため今回も多くの為替アナリストたちは、ドル円は一時的に円高方向に進むのではないかとの予測を立てていましたが、結果的にはドル安円高に振れる展開となりました。

2日の朝方には円高方向への窓開けが若干発生したものの、その後アジアタイムからロンドンタイムにかけては、一貫してドル高円安方向に動く展開となりました。

 

年末年始のドル円の推移

 

これは海外勢が今回の大地震を受けて、日銀による緩和の巻き戻しやマイナス金利の終了が後ずれするのではないかとの予想を行ったことが大きな要因と見られています。

年末には100%となっていたFOMCによる今年3月の利下げ織り込みが低下したことも手伝い、ドル円は昨年3月以来の大幅上昇を記録する結果となりました。

確かにFOMCによる今年3月の利下げは前のめりすぎではありますが、今回の地震で日銀によるマイナス金利の終了が頓挫することになるのかが気になるところです。

長期のドル買い円売りトレンドとなるかどうかは不透明

年明け以降は、にわかにドル高が進んでいますが、あくまでもFRBと日銀が政策変更を行うのではないかとの憶測によるドル買いであるため、今後この動きが長期的なトレンドになるかどうかは、今月の日銀政策決定会合とFOMCの結果次第と言うことになりそうです。

日銀については、継続的な利上げを議論する段階ではなく、金利を0.1%引き上げとにかくマイナス金利を終了させようというレベルの話であるため、今回の大地震を受けても植田総裁の意向により実施される可能性はまだ残されています。

ただ、0.1%だけと言っても一度利上げを実施すれば、市場が更なる利上げを期待するのは間違いなく、ワンオフの利上げが実現できるかどうかが焦点となりそうです。

またFRBについても、パウエル議長による利下げを示唆する発言が話題となりましたが、バイデン政権の意向や経済状況などを考えると、3月もしくは5月に利下げがスタートするというシナリオが全く消えたわけではないため、1月に開催されるFOMCの結果が注目されます。

コロコロと変わる市場の中銀政策の織り込み度

昨年からアルゴリズムが率先して市場に特定のセンチメントを醸成しているせいか、市場の中銀政策の織り込み度が、毎回極端に推移している点が気になるところです。

市場の催促により、このような織り込みが進んだとも考えられますが、年末年始のファンダメンタルズにこのような変化が示現したことはないため、今年は年明けから予測が難しい状況となっています。

多くの海外の投機筋もドル売り円買い相場を想定したようで、ドル売りポジションがここ2日あまりで一斉に損切りを余儀なくされたことがわかります。

為替相場は例年、年明けの第二週に大きな変化が起きやすいため、あくまでも来週の相場を見てから方向感を探りたいところですが、昨年の相場とはまた異なる動きが継続しそうな状況です。

能登半島地震は、海外勢から見れば日本国内で起きた災害のひとつとして映るかもしれませんが、経済の中核に与える影響については東日本大震災とは異なる部分がありそうです。

いずれにせよ地震という自然災害が相場に大きく影響することは間違いないため、引き続き厳重な注意が必要です。