フランスの政治的混乱を受け、欧州連合(EU)内で進められていた軍事装備の共同調達や、ウクライナ支援の新たな取り組みが頓挫するのではないかとの懸念が広がっています。

複数の事情関係者によると、マクロン仏大統領が推進していた共同資金調達を通じたEUの防衛力強化策に対する疑念が高まっています。

フランスとドイツの与党が欧州議会選挙で敗北を喫したことで、EU内の政治的不安は一層深まりつつあり、ストラテジストの多くはユーロに対して新たな下押し圧力が加わる可能性があると見ているようです。

 

 

9日の議会選挙では、フランスとドイツの極右政党が躍進する結果となりました。

一方、マクロン仏大統領とショルツ独首相は大きな打撃を受け、この影響は未だに回復の兆しを見せていません。

その後フランスでは、マクロン大統領が国民議会(下院)を解散し選挙を実施すると表明したことにより、ユーロは対ドルで1か月ぶりの安値水準にまで下落し、市場の地合いは引き続き悪化している状況です。

また、7日に発表された米雇用統計は予想を上回る結果となり、ドルは大きく上昇、すでに圧力を受けていたユーロは一段と売られる展開となりました。

ユーロのさらなる下落展開を警戒

最近のユーロは、昨年8月以来初めてネットロングに転じる動きを示していますが、先週のECB理事会で利下げが決定するまでは、今年4月の安値から約3%の上昇をみせていました。

ストラテジストたちは、パリ夏季五輪を前に実施されたフランスの下院選挙で、極右勢力が力を強め、マクロン大統領の法案推進能力が損なわれることに不安を抱いており、フランス経済への影響を危惧しています。

また、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散と総選挙を表明したことで、ウクライナ支援強化を図る西側陣営のリーダーとしての役割が損なわれる懸念も浮上しています。

フランス国内では、マクロン大統領率いる与党連合が、対抗する極右政党・国民連合(RN)および左派勢力に世論調査で大きく後れを取っている状況にあります。

特に、マリーヌ・ルペン氏率いるRNがリードを広げ、過半数の議席を確保すれば、EU首脳陣は挑戦状を突きつけられることになります。

フランス総選挙の第1回投票は6月30日に行われ、決選投票は7月7日に行われる予定となっています。

状況によっては、マクロン大統領が辞任に追い込まれる可能性も十分にあるため、今後の行方に大きな注目が集まっています。

結果次第でEU圏のパワーバランスが崩れる可能性も

総選挙でマクロン大統領は、自ら率いる与党・再生(RE)が厳しい結果となったとしても、辞任しない姿勢を示しています。

しかし情勢は流動的であるため、辞任に追い込まれる可能性は十分にあり、それが現実のものとなれば、EU圏のパワーバランスが大きく崩れることも考えられます。

足元では、フランスの極右政党・国民連合(RN)が勢力を伸ばしており、月末には欧州全体の政治情勢の話題が市場を席巻することが予想されます。

また国内でも、財務省の介入以降、ドル円相場に変調が見られ、長期筋も積極的なトレードを控える状況が続いています。

投資家は不安定な相場に我慢を強いられる状況が続いていますが、変化の兆しを見逃さないよう、しっかりと相場状況を注視していきたいところです。