Photo(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

新型コロナウイルス変異株の感染再拡大に対して経済や金融市場に及ぼす影響が懸念されていますが、感染者数の拡大と並行するようにワクチンを接種するかどうかを巡り社会の分断が発生し始めています。

日本国内では菅首相が9月末までにトータルで2億2000万回分のワクチンを確保したと発言していますが実際には足りておらず、ワクチンを接種するかしないかはあまり問題になっていません。

しかしながら米国ではすでに全国民の7割が接種を終えていて、逆に宗教的な理由や政党支持の理由からワクチン接種に応じない国民の存在が顕在化しつつあり、これが社会の分断を引き起こし始めていることが大きな問題になっています。

バイデン政権はワクチンを接種したら一人100ドルを支給するといった策を各州に働きかけていますが、連邦政府の職員は接種を義務付けており、自由意志を尊重する米国社会ではこうした押しつけや義務付けが強制社会の開始を暗示するものとして猛烈な反発を引き起こしています。

新型コロナ感染初期の段階ではマスクを着用するかどうかも大きな問題になっていたので、ワクチン接種の強制には反対の意見が多いと思われます。

米国の民間企業では判断保留の状況

米国を始めとして欧州各国の政府はワクチン接種率を100%近くに上げることで、新型コロナが経済や社会に及ぼすリスクを最小限に食い止めたいと考えていて、米国に限らずドイツでもPCR検査を有料化することでワクチン接種への圧力を強めようとするなど色々な手を使って国民に接種を促しています。

そんな中で米国の民間企業は強制接種を打ち出すかどうかかなり思案しているようで、多くの会社が判断を保留しています。

一つは一部の社員について会社に出社せず完全に自宅で勤務するテレワーカーの制度が適用になっていることから、ワクチン接種が従業員の感染に影響を与えなくなっていることも判断を鈍らせる材料になっているようです。

また思想信条、宗教上の理由から接種を拒否する人を解雇するといった状況になった場合、人種差別に繋がる問題として社会から大きな反発を食らうリスクもあり、簡単に決められないというのが正直なところでしょう。

このあたりでやり方を間違うと株価などにも甚大な影響を及ぼしかねないだけに、多くの企業がその他企業がどういった判断をするのか様子見をしているケースも多いようです。

ワクチン自体の効果に問題がではじめている点も懸念材料

早い段階におけるワクチン接種では確かに効力が発揮され感染者数は抑え込まれましたが、足もとではさらに感染力の強い変異株がまん延し始めていて、既存のワクチンでは接種しても感染してしまい効力を発揮できないといった事例も多く発生しています。

また詳細はあまり詳しく伝えられていませんが、副反応についても想定外の反応が出ており、強制接種を打ち出したあとにワクチンの副反応で甚大な影響が発覚してしまうと、接種を義務化した企業が訴訟の対象になるといった複雑な事情も顕在化し始めています。

これまでは新型コロナの問題といえば感染者数をどう抑制し経済に影響がでないように封じ込めるかが最大のポイントとなっていましたが、ワクチンの接種の普及が大きな問題となってきた状況下ではワクチン接種を受けない人にプレッシャーをかけたり強制化したりする動きがで始めており、結果的にこれが社会を大きく分断する強い材料になることが非常に懸念されています。

かつてこのような事が世界的に問題になったことはないので、リアルな経済や金融市場にどれだけの影響を及ぼすことになるのかよく分かっていませんが、少なくともプラスに働く要素は全く存在しておらず、むしろ不測の事態を引き起こすことで相場に多大な影響を及ぼすこともあると思われます。

新型コロナによる多くの問題は一時的に感染収束で金融市場のテーマからは外れた感がありましたが、現実ではまだまだ続きそうです。