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既に米系の金融メディアが報じ始めていますが、とうとう恒大集団のデフォルトが近づいており、中国人民元建ての利払いは可能ですが、外貨であるドル建ての利払いが過去9月23日、29日、10月12日と既に三回スキップされ、一か月の猶予というルールに基づくと10月23日、早ければ19日には前倒しでデフォルトするのではという観測が高まっています。


予想通りの破綻となった場合為替にどのぐらいの影響がでるかが非常に気になりますが、負債総額33兆円や34兆円と言われる中、このドル建て社債の部分は日本円にして2兆円規模と言われているので、西側諸国の投資家に与える影響はそれほど大きくないという楽観視する声も上がっています。

ただその先も莫大な債務の利払いが続くので、この場面だけなんとか回避することができたとしても破綻は時間の問題とも言えます。

また多くの欧米の市場参加者は既に中国の社債市場から資金を引き上げており、大きな混乱はないという見方も強まっています。

まずは週明けこの会社のデフォルトがどういう動きになるのかに注目です。

人民元建ての債券のほうはいろいろ調整をして債務整理をする動きが見られそうですが、果たしてドル建ての海外投資家が保有する部分がどうなるのかに関心が集ります。

中国債券市場全体に及ぶ危機という見方も

中国の不動産業界はすでに1日1社が破綻するといった凄まじい状況に陥っているようで、すでに事態は恒大集団のデフォルトには留まらなくなっているという見方もあります。

中国におけるドル建ての社債市場は我々が想定している以上に大きく、市場全体に不安が走れば恒大集団以上にほかの銘柄でも同様のリスクが高まる可能性はあり、安心するのはまだ早い状況です。

すでに中国の社債市場規模は4.1兆ドル、日本円にして450兆円を超えており、相当少なく見積もってドル建てが10%としても45兆円規模になるので、ここがおかしくなるだけでも相当なダメージになることが容易に予想できます。

サブプライムローンの時も最初はたいしたダメージではないとされながらも最終的には相当な連鎖をもって市場が崩壊したのは記憶に新しいところです。

実際中国の不動産業界では恒大以外の中堅も厳しさを増しており、主要都市でマンション開発などを手掛けるキンエン・リアル・エステートは15日に償還期限を迎える2億ドル(約230億円)のドル建て債について2023年満期の社債との交換を提案していますし、香港取引所に上場する新力控股は18日期限の2億5千万ドルの社債について流動性を慎重に検討した結果、支払いのための十分な財源がないとして「デフォルトに陥る可能性が高い」と公表しています。

個々の金額は恒大に比べれば小さいものの、波及効果は絶大で果たしてどういう動きが市場に現れるのかが注目されます。

円はリスクオフで一点円高にシフトする可能性

足もとでは円がドルに対しても他通貨とのクロス円でも全面安の展開となっていますが、ひとたびリスクオフが強まることになれば一転して円買いが強まる可能性があり、とくにクロス円ではこれまでの上昇に対して激しい巻き戻しが起きる可能性があります。

最近ではひとが裁量取引をしていればずっと前に認識しているようなリスクでも、事態が起きてはじめてアルゴリズムとAIが過剰に反応して相場が動くことが非常に多くなってきています。

恒大集団のデフォルトの問題がこれに該当することになるかは起きて見ないと良く分かりませんが、十分にありうる可能性をあらかじめ認識しておく必要があります。

新型コロナが中国で猛威をふるっていたときも米株は全く反応せずに上昇を継続していましたが、全米で感染者が爆発的に拡大した直後に大暴落に陥っています。

中国不動産のデフォルト問題もおなじように時間をおいて大きな影響が出る危険性はまだ十分に残されています。