連休明けの為替相場は日銀政策決定会合、米国FOMCなどをすべて通過し、行って来いの相場からスタートすることとなりました。
ただインフレ関連の指標はおおむね弱く展開し、月次のCPI、PPIを経て市場ではもはや6月のFRB利上げはなしという見方が強まることとなりました。
これを受けて米債利回りは低下、ドル円もそれと相関するかのように弱含みの展開となりましたが、地銀パックウェスト預金、前週9.5%減という報道がNY株の取引スタート前にヘッドラインに走ったことから同行の株は29%急落で取引一旦停止に追い込まれ、リスクオフでドル買い需要が高まったことから下落したはずのドル円はいきなり吹き上げる展開となり、インフレ経済指標と金融機関破たんリスクでドル円は綱の引き合いに陥ることとなります。

米地銀の預金の引き出し動向はまさに預金者次第であり、これに反応して株価が動くことになればもはやいつでも破綻するリスクに直面しているのが実情で、いつ相場がリスクオフになるかは全くわからない状況なのでトレードはめっぽうしにくい状況に陥っていますが、日を超えるとまた新しい材料が顕在化してくることになりました。
金曜日NYタイム、日本時間の午後11時に発表された5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は57.7で予想の63.0から下落しましたが、同時に公表された1年および5年先のインフレ期待はともに予想を上回る結果となったことから、ドル円は一転して買われる展開となりました。

ミシガン大学消費者信頼感指数は長期的にみても相当下をさまよいはじめており、決して状況がよろしくないことは明確になりはじめています。

さらにFRB内では中立派として知られるボウマンFRB理事が最新の消費者物価指数(CPI)がインフレ鈍化基調の持続性を明確化しなかったとし、物価高と労働力ひっ迫が根強ければ追加利上げが必要だとした発言で相場のセンチメントは一変、それまで6月利上げはなしと見ていた市場は6月FOMCの利上げと年内利下げ観測が大幅に後退する相場となってしまいました。

最新のFedWatchでは10%を切った6月FOMC利上げ確率が再度15.5%にまで上昇しはじめており、市場はひどく指標と要人発言に敏感になっていることがわかります。

現実的には1日や2日で相場環境が大幅に変化することはありませんが、アルゴリズム主体で指標や要人発言に敏感に反応する状況が確立していることから、猫の目のようにセンチメントが変化する状況が延々と続くこととなりました。

Data Tradingview

週明けもまだ6月FOMC利上げがどうなるのか、さらにその先に利下げがあるのかどうかを占う材料が飛び出すたびに上下動を伴う相場になりそうですが、大きな方向感は全く感じられないことから137円と133円を挟むようなレンジ相場の中でボラティリティの高い展開が予想されます。

債務上限問題がどう決着するかで相場は相当動きそうな状況に

週明けいよいよ相場に大きな影響を及ぼしそうなのが米国の債務上限問題です。
バイデン大統領はすでに共和党議会関係者と協議を始めていますがすんなりとは進行していないのが実情で、場合によっては週末の広島G7サミットを欠席する可能性すら示唆するというかなりクリティカルな状況に陥りつつあります。
すべては上下両院の議会がどう判断するか次第になりつつありますが、ここから急転直下合意になると囁かれています。
特別措置の限界が6月1日から9月ぐらいまでずれ込むことになれば一旦のドル円の下落は回避されることになりそうで、さらに民主・共和党がごく短期的かつ少額の領域でデットシーリングを引き上げることができればリスクオフ相場は終わるでしょう。

反対に政治的な混乱が最後まで尾を引くようで、すごく短期にせよ政府はデフォルトの状況になりドル円は大きく下落する可能性が高まります。
さらにここからは判断が難しくなりますが、格付け機関が米国の格下げを宣言した場合米債が大きく売られて金利が急上昇しドル円は実に不本意な上昇を余儀なくされることも考えられるので、デフォルトといってもその内容、状況次第で相場は上下どちらにも動くリスクが高まります。
イエレン財務長官が口走っている上限達成日が6月1日である場合すでに2週間しかないので、ネガティブな報道が続けば週内にもドル円は一時的にせよ大きく下落する危険性が高まることを覚悟しておく必要がありそうです。

ユーロはまさにドル次第の動きになる可能性大

週明け相場は完全にドル主導で展開することが想定され、ユーロドル、クロス円はそれに大きな影響を受ける相場になりそうです。
実際先週の相場でもドルの動きにあわせてユーロドルは逆相関の動きを示現しているため、今週はますますその傾向が強くなることが予想されます。

Data Tradingview

米国の債務上限問題は議会の対応で解決できるものだけにここまで大きな騒ぎにはならないといった見方が強かったですが、期限が近づくことで市場はこれまでにない神経質な動きを見せているので、とくにNYタイム始まりの時間帯の報道には十分注意することが必要になりそうです。
こうなってしまうとテクニカル判断のトレードは全くワークしなくなることもありえるので、予断を持たずに相場の動きについていくといった対応が重要な週になりそうです。
ゴールデンウイークの一週間疑心暗鬼で激しい上下動を繰返した為替相場はまたしても同じプロセスを通過すると思われ、市場参加者は少なからず疲弊しそうですが、とにかく諦めず過信せずに状況をしっかり確認してトレードを進めていくことが肝要です。