週明け11月17日には早くもトルコ中銀の政策決定会合が開催されます。

市場では既に発表されているトルコ10月消費者物価コア指数が市場予想を下回ったことや、足もとで発表された経常収支が市場予想を上回ったことを背景にして今回の11月会合で100bpの追加利下げ、さらに12月会合でも100bpの追加利下げに踏み切るとの予想が非常に強まっており、発表を前にしてトルコリラは対ドルでも対円でも大きく値を下げる形となっています。

ドルトルコリラはすでに投機筋が猛烈に買上げており、利下げが見送られればまたトルコリラに買戻しが入ると思われますが、このままでは史上最高値をさらに更新しかねません。

Data Tradingview

インフレ継続でも利下げを進めたいエルドアンの真意とは?

利下げを希望しトルコ中銀に圧力をかけているのはエルドアン大統領ですが、彼は高金利を維持することで景気が悪くなり国民の支持を失ってしまうことを最も恐れており、2023年に実施される大統領選挙をにらんでとにかく利下げを継続要求しています。

ただ実質物価上昇は政策金利よりも遥かに高いことから、このような利下げを続けた場合実質マイナス金利になりかねず、かなりトルコ経済全体が危険な状況になる可能性が高まります。

そうでなくても足もとでは世界的に石油価格が大幅上昇していて、中東の産油国に隣接するトルコは自国で一切石油の産出がないことからすべて輸入に頼っており、インフレは想像以上に深刻なものとなっています。

こうした状況を十分に理解している投機筋は短期的にトルコリラを売ることで利益を得る動きに出始めており、今回は政策発表前にトルコリラが下落することが危惧されています。

Photo AFP https://jp.sputniknews.com/20160222/1655450.html

エルドアン自身の健康不安問題も顕在化

さらにエルドアン大統領自身の健康不安説も高まりを見せており、どこが悪いのかは公表されていませんが体調が悪化していることは事実のようです。

先日も死亡説といったデマ情報が流されてトルコリラが瞬間的に売られるといったことも起きていますが、これから健康に関する報道などがでてきた場合は政策金利と関係なくトルコリラが売込まれるといったリスクも想定しておく必要があり、トルコリラを買い向かう取引は難しさを増すところにあることがわかります。

本邦個人投資家はスワップ狙いでのトルコリラ買いを諦めるべき時期が到来

本邦の個人投資家がスワップ狙いだけのためにトルコリラ円を購入しているのは世界的に有名な話となっていますが、一定以上のレバレッジをかけて売買している場合には価格の急落で強制ロスカットを含めた損切が出やすいことも投機筋は十分理解していて、トルコリラの下落時には必要以上に売込んでロスカット誘発から大幅下落を仕掛けてくる可能性も高く年末に向けて注意が必要です。

国内の店頭FX業者は今のところスワップをつけていますが、カバー先の金融機関によっては政策金利に見合ったスワップをつけないところも続出しているので、スワップ狙いの取引がワークしなくなる危険性も高まっています。

国内ではFX業者がこぞってトルコリラ円の買いプロモーションを仕掛けたことからスワップ狙い通貨としてトルコリラ円を長期で買い持ちする個人投資家が想像以上に増えていますが、実際のところキャピタルロスも激しくなっており、この手のトレードはあまりおすすめできません。

エルドアンが大統領を務めるかぎり金利が再上昇することは考えにくく、このまま保有し続けるのはリスクだけが高まることになりかねません。

そういう意味ではこの手のトレードはもはやワークしないものとして撤退すべきタイミングに入っていることを強く感じさせられます。

なかなかやめられないのが個人投資家ですが、このまま続けているととてつもない損失に直面する危険性もあり、今こそ精査すべき時間帯であると思われます。