12月のFOMCを無事通過してクリスマス休暇入りになるのかと思われた米株市場ですが、17日以降徐々におかしな状況になりつつあり、年末さらなる調整が出るのか注目が集まりました。
しかし結局23日の市場では一応値を戻す形で予定調和のクリスマス前相場となって終えています。
市場ではファンド勢が米株から早々と撤退し、今週相場に残ったのはロビンフッダーをはじめとするような個人投資家勢だけとなりかなり危うい感じになりましたが、年末27日からの7営業日に渡る、いわゆるクリスマスラリーが示現するかどうかに現在大きな関心が集まっています。
例年この7日間には大体1.3%から1.6%程度の相場上昇があることから、今年も同様の上げがでるのかどうかに期待が高まっています。
欧州は週明け29日まではクリスマスの振替休日などで動きませんが、米国だけは月曜日からほぼ新年相場入りして新たな動きが見られるタイミングとなります。
本邦は1月3日は正月のお休みという感じですが、米国勢はすでに年末から新年相場に向けてラッシュしてくる点には相当注意しなくてはなりません。
市場はテーパータントラム再来リスクに身構える状況
足もとの米株市場を見てみると何ら問題なく年末相場から年始相場にさしかかろうとしているように見えますが、すでに米国の市場参加者はテーパリングに対する懸念により、金融市場がかんしゃく(タントラム)を起こすことに非常に神経をとがらせていると言われています。
米国市場では2013年に当時のバーナンキ議長が緩和から抜け出すような発言をしてテーパータントラムが起きましたが、それ以降も2015年、2016年、2018年に同様のテーパータントラムに直面したものの、その都度FRBが緩和的な動きに出たことからなんとか乗り越えられています。
今回この市場のかんしゃくが起きれば実に5回目となりますが、現状は過去のタントラム発生時よりも多くのカネが市場にバラまかれて市場流動性はかなり高く保たれている上に、個人投資家が絡む世界ではこの2年間の新型コロナに伴う過剰な給付金の支給で180兆円近い預金残高が確保されていることから、簡単にはこのかんしゃくに巻き込まれて大幅下落はしないと見ているファンド勢が多いようです。
ただ、何が起きるかわからないのが相場の現実なので、年末はこのまま安定的に推移しても年明けどうなるのかはまだ分かりません。
FRBはリーマンショック以降出口戦略に成功したためしがない
米株の場合過去のような暴落率を記録する下げに見舞われることはないのかもしれませんが、三指数ともに価格自体が驚くほど上昇してしまっていて、例えばNYダウ一つとってみても10%下落すれば3600ドルと言う値幅での下落になるので、実額ベースでは過去に類をみない激しい相場下落につながる可能性があります。
このコラムではかなり頻繁にご紹介していますが、米債のイールドカーブがフラット化しFRBが短期国債利率をいじり始めて、元に戻りつつあるようなタイミングが非常にリスキーであり、株式相場の大幅下落に繋がりやすいという点はあらかじめ認識しておきましょう。
現状では2022年1月から3月までにFRBはテーパリングを早期終了し、その後少なくとも3回程度の利上げを示唆していますが、残念ながらこの14年間では一度としてこうした緩和終了と出口戦略の成功を果たしたことがないだけにテーパータントラムの動きには相当な注意が必要です。
今回続投が決まったパウエルFRB議長も2018年末には利上げをきっかけに相当厳しい相場の下げの洗礼を受けているので、そのリスクについてはかなりしっかり認識しているものと思われますが、うまく乗り切れるかどうかは誰にもわからないのが正直なところです。
為替は株価の下落にリニアな影響を受ける存在
米株の話になると為替にはあまり関連性がないのではと考える個人投資家が多いようですが、ドル円は徐実に米株の動向に影響を受けることになり、豪ドル円やNZドル円といったクロス円通貨はさらに確実にその影響を受けて大幅に下げる可能性があります。
各資本市場が相互に影響を与えるレベルは昔よりもさらに上昇しており、一見相関性がないように見えるものでもひとたび大幅下落が示現すれば連動感を持った下落に見舞われることが多くなります。
年明けの相場については常に危機感をもって臨んでいくことが重要です。