3月のFOMCの利上げまであと1か月あまりということもあってなのか、市場はFRBの利上げの年間回数などに驚くほど前のめりの状況になってきています。
17日午前4時に前回FOMCの議事録が発表されましたが、特段利上げに対してタカ派的な内容が見当たらなかったことからドルは売られる形になり、ドル円も下落するという展開を示現しました。
米債金利は既に10年ものでも2%を割らなくなってきたので金利だけのコントラストから言えばドル円は上昇して当然ですが、すんなりと動かなくなってきており相場の難しさが一段と露呈する時間帯に突入しているようです。
もともとFOMCの議事録速報はあくまでミニッツということで、歴代の議長の判断で市場に知らせたくないことは割愛するなど相当デフォルメされています。
そのためたとえ利上げ幅や回数について突っ込んだ話がされていても、あるいはFRBの資産の縮小・QTに議論が及んでいたとしてもそのまま外に出ることは全く考えられないことは市場参加者も良く判っているはずなのですが、アルゴリズムのせいなのかタカ派発言が確認されないとドルが売られるという奇妙な展開が常態化しつつあります。
金利の上昇はすべての金融商品の現在価値に大きな影響を及ぼすことになり、企業が社債を発行して自社株買いなどを行うとここからの行動にも大きな制限がかかることは間違いなく、とくにバブルが進み過ぎた債券市場が強烈な巻き戻しのリスクに直面しているのは紛れもない事実となっています。
ただ4年前の2018年1月には米10年債は3.1%を超えており、2019年1月でも2%スレスレのレベルだったので、今回の金利上昇開始がこの世の終わりのように考えるのは気にしすぎ感が否めません。
そもそも年間2%程度の利上げでインフレに対抗できるのかという大きな問題
ここ数回の米国のCPIでも分かる通り、物価上昇率は年間で7%を超えるようになっています。
こうなるとFRBがインフレファイターとして利上げをもってして市場に機能していくのはもっとも重要な役割になるわけですが、3月に0.5%利上げするのか、年間7回、あるいは8回利上げするのかといった予測で相場は大騒ぎとなっているもののトータルで2%からせいぜい2.25%程度の利上げで本当にインフレに対抗できるのかという大きな問題が発生します。
また利上げの実効性が現れるのは政策実施から18か月かかるという話も出てきていますので、全然利上げが足りないという話が出てくることは間違いなさそうで、足もとで金融アナリストが中心になって今年何度の利上げが実施されるのかという話は無意味なことのような気もします。
もう誰も覚えていないかもしれませんが、リーマンショック前の2008年の米国の政策金利は3%であり、2019年ですら2.5%程度を維持していた時期もあったので、経済が回復して元に戻るならもっと前に2%、3%の水準に回復させるべきで、今回のFRBのインフレ対策としてはスロースタートになってしまったのが現実です。
今年の利上げ進行の速さに市場が恐れおののくのは違和感を感じさせられるものがあります。
その位ゼロ金利からの決別というのは市場にとって大きな影響を与える劇的な出来事と市場は捉え始めているのかもしれませんが、リアルな相場では既に年間2%程度の利上げは完全に織り込まれ始めており、ドル円がこれで116円台に上伸していかないのであるとすれば為替もここから急激なドル高にはならない可能性も出てくるでしょう。
株式市場がここから大暴落を喫してもFRBは本当に利上げできるのかがさらなる大問題
FRBはさすがに今年利上げを継続せざるをえないところに追い込まれていますが、これまでもっとも気をつかってきた株式相場の下落や債券相場が大きく崩れだしたときに、本当に粛々と利上げや資産縮小に取り掛かれるのか、が大きな注目点となっています。
本来株価の維持などは中欧銀行のもっとも重要な役割ではなかったはずですが、リーマンショックから14年を経てインフレ対応よりも大きな役割となってしまっているだけに、株の暴落が起きた時のFRBの対応に非常に大きな注目が集まります。
また米国の株式アナリストは相場が既に利上げを織り込んだので買い場がやってくるなどの話をし始めていますが、FRBがここからさらに資産縮小・QTを実施した場合本当に株式市場が耐えられるのかは大きな疑問点であり、まだまだ相場が下落する余地があると見ている市場参加者も多いのが実情です。
3月17日のFRBの利上げの発表以降もこうしたがたつく相場が延々と続きそうで、トレーダーにとっては不快な相場状況が継続するでしょう。