日銀は先週2月10日、米国の1月CPIが発表される少し前の同日夕刻に突然10年もの国債を0.25%で無制限買い入れすると発表し市場を驚かせることとなりました。

突然の発表でドル円は30銭程度上値を追う展開となったわけですが、2月14日、これを事前予告どおり実施してみたものの結果は無応札ということになり、外角的には金利上層を抑えたとも言えますが実際にはほとんど何の効果もなかったことが露見し始めています。

これは日銀があらかじめ許容している金利の上限に近づいたのでさらなる上昇を抑える必要があると判断したことから行われたものですが、長期金利が0.25%を下回る状況ではどこの金融機関も応札をしなかったというのが現実でした。

この手の指値オペは実に3年ぶりのようですが、実際にはゼロ金利でない限りは日銀が買い入れで金利を制御するのは難しく、恐らくここからは7年債や20年債などが売込まれて金利が上昇していくものと思われ、単にイールドカーブをいびつにするだけの結果に終わりそうなものとなりつつあります。

確かにこの30年というもの先進主要国の状況を差し置いてただ1国だけほぼゼロ金利とデフレを継続しMMT理論のあまり良くない意味での基礎を築き、2013年からの量的緩和では本来中欧銀行には実施不能とされた長期金利の制御を実現し、株も債券も大量に買い入れるという全く他国にはない政策モデルを実現してきたことを自信にしているのではないかと思われます。

しかし今回の主要国同時多発的なインフレの到来において日本だけがこれまで通り全く金利上昇に遭遇せずに緩和を継続できるとは思えず、今後こうした無制限の国債買いオペなどを連発しても金利を制御できない状況がいつ示現するのか非常に強い関心をもって見られるでしょう。

日銀だけが一切口にしない出口戦略

米国FRBが3月に利上げに踏み切ることはもはや市場が完全に織り込んだ事実となっていますが、ECBラガルド総裁もすでにインフレが一時的であるといった発言を撤回し利上げせざるを得ない状況に追い込まれているので、本邦日銀だけが頑なに緩和継続を口にできるのもあとどれだけの時間が残されているのかが非常に大きな問題になりつつあります。

黒田総裁はとにかく政策変更しないまま退任を迎えて逃げ切りたいのだと思われますが、資源をはじめとする輸入物価が確実に上昇する中にあって日銀だけが8年も続けてきた緩和措置を無条件で継続していくのには無理があり、ETFを始めとする日本株買いももはや立ち行かないところまで買いが進んでしまっているので、人工値付け相場はまったく上昇しない停滞状況に突入してしまっています。

こうなると債券相場も株式相場も日銀が完全に破壊してしまって機能しないかのようにも見え、ここからどのように改善していくことになるのかが注目されます。

一部ではすでに黒田総裁の後任人事にも関心が集まる始末で、求心力は急激に弱くなっていることがわかります。

無制限の買いオペでは円安は進行せず

この手の買いオペがワークすれば市中には円がバラまかれてしまうのでドル円はさらに円安が進む可能性も指摘されていましたが、円安になったのは10日の発表直後だけでその後はウクライナ情勢のヘッドラインにも巻き込まれてドル円は上昇する素振りも見せていません。

日銀としては極めて政治的なパフォーマンスで金利を上昇させないような取組を行っているとアピールするつもりだったと思いますが、一部の市場関係者からは嘲笑する声も聴かれており、ここからの日銀の政策対応に市場の注目が過度に集まる時間帯が続きそうです。