2月末、ロシアがいきなりウクライナ侵攻を始め西側諸国が容赦ない制裁を加えた結果、ロシアルーブルは暴落し完全に紙切れになりかねない所まで値を下げる展開が続きました。
ところが足もとではユーロ、ドルなど主要通貨に対して大きく値を戻す展開になっており、ロシアの暴挙に対して為替市場は全く正義を貫けない状況に陥りはじめています。
ウクライナの首都キーウではロシア軍が暴れまわった結果、市内は凄まじい被害を受けており、民間人にもたくさんの死傷者がでているようですが、為替相場はこうした目を覆いたくなるような悲惨な状況を完全に無視した動きになっています。
ロシアとの資源取引を完全に打ち切れないのがその大きな理由か
戦争が始まった当初、ロシアからの資源輸入はSWIFTの規制などもあって完全に閉ざされるかのように見えたものですが、結果的に天然ガスなどは完全に輸入を断ち切ることができず、ユーロ圏ではまだユーロ建てで支払いを行ってはガスを確保するといった動きが継続中です。
天然ガスはこの騒ぎで実に10倍程度の価格にまで跳ね上がっており、ロシアは反対に利益も大幅に拡大している状況です。
またサウジアラビアなどもロシアとルーブル建ての取引を行う意向を示しており、中国も当然のことながらロシアとの資源関連での取引を続けていることから、これらの状況が重なって戦争はまだ終結していないにも関らず、ロシアルーブルは大きく買い戻されています。
また4月はここからロシアソブリン債の返済を巡ってデフォルトリスクも高まりますが、為替はどこ吹く風の状態になりつつあります。
結局需給の関係でルーブルが必要になれば当然値を戻すというのが市場の原則なので、今のところこの状況がまだまだ続きそうな動きになるでしょう。
3月相場ではドル円のほうがルーブルよりも円安という驚愕の事態
2月から足元までのドルルーブルおよびユーロルーブルのチャートは次のようになります。
ここには載せていませんがロシアルーブル円も大きく戻しており、3月単月だけだとドル円の円安のほうがロシアルーブルの下落よりも大きかったという驚きの状況も見え始めています。
世界の市場はドル基軸を強硬に維持することができなくなっている
本来西側諸国による経済封鎖が完璧に行われればロシアルーブルはさらに大暴落に陥るであろうことは簡単に予想できたわけですが、結果はそうなっていないという厳しい現実を我々は目の当たりにしています。
資源商品はすべてドル建てで決済するのが当たり前になっており、SWIFT規制などでロシアは息の根を止められてしまうはずだったのですが、実際にはドル建て以外でロシアと取引する国が非常に多く、米ドル圏というのは想像以上に狭まっており、今回の制裁をチャンスとして反対にドル基軸という体制の崩壊が加速しそうな状況も見え隠れしている、と言えます。
米国といえば世界の金融と経済の中心と認識されてきたはずでしたが、蓋を開いてみると必ずしもそうなってはいない厳しい現実が垣間見られています。
米ドルが基軸通貨ではなくなるとなればこれまでのように外貨準備のために米債を買う必要もなくなり、さらに売りが加速するリスクさえ顕在化してくるため、米国にとってはかなりの一大事になることも考えられ、ここからの相場の動きが非常に注目されます。
バイデン政権下では、2024年までに連邦債務が日本円で5000兆円を超える巨額な水準になろうとしており、国債価格が下がる、あるいは買い手がいなくなるというまさかの事態に陥れば、とんでもない状況が待ち受けている可能性もあります。
とくにこれまで米債を大量に買い付けてきた中国がロシアと同調して米債を買わなくなるとなった場合には、かなり深刻な状況が示現するかもしれません。
ロシアのウクライナ侵攻問題は今のところ解決の兆しがありませんが、為替市場がそれとは関係なく相場を展開している姿をみると、金融市場にはまったく正義が通用しないことを改めて痛感させられます。