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FRBブレーナード理事は4月5日、ミネアポリス連銀のイベントにオンラインで出席し、FRBの資産圧縮を5月にも急ピッチで始めると発言し市場で大きな波紋を呼んでいます。

ロシアのウクライナ侵攻が食品や原油の価格を一段と上昇させるリスクにも触れ、主に低所得層の生活に打撃を与えるインフレの抑制を急ぐ姿勢を明確にしました。

ブレーナードといえばハト派の代表格で、今年は議会承認が得られ次第副議長に就任する予定ですが、その人物が相当タカ派発言をし、しかも資産縮小いわゆるQTを示唆したことからドルは急騰、反対に米株は軒並み下落となっています。

また5日にネーティブアメリカン・ファイナンス・オフィサー・アソシエーション主催のイベントに登場したサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、やはり5月にもバランスシートの縮小を開始する可能性があるとの見解を示し、ブレーナード理事の発言をほぼエンドースするかのような動きに出ています。

 

同様の発言はブルームバーグのインタビューに登場したカンザスシティー連銀のジョージ総裁にも見られ、5月のFOMCで0.5ポイントの利上げが選択肢になると語っており、利上げの程度は、連邦準備制度のバランスシートを8兆9000億ドル(約1100兆円)から圧縮させる計画と絡めて検討される必要があるとも述べています。

FRBのメンバーからこうした資産縮小の動きに対する発言が飛び出すのは偶然ではなく、早期に観測気球を上げて市場の反応をうかがっている気配が濃厚で、市場が織り込めば実際にQTを開始する可能性が高まります。

足もとの米株相場は裏PPTが株を支えているとのもっぱらの噂

米株相場は3月後半からなぜか急に相場が買い支えられて上昇する動きが続いていますが、一部ではPPTプランジプロテクションチームが隠密に株を買い支えており、とくに後場の終わり1時間ぐらいで急に下げていた株が買い戻されるという奇妙な動きが顕在化しつつあります。

このPPTによる株の買い支えは、直近では2018年末パウエルが利上げを継続実施しようとして株価がクリスマスに大暴落した時にも発動され、当時は年金が買い支える動きになりましたが、今回は稼働が公表されておらず支持率の低下がとまらないバイデン政権の意向で、中間選挙まで半年以上時間のあるこのタイミングから株価を下げないように動いているのではないかという見方が市場に広がっています。

ただFRBメンバーの相次ぐ資産縮小実施発言は米株相場に相当なボディブローとなって現れており、このような状況で5月のFOMCに強硬実施ができるのかが非常に大きな関心事になりそうです。

インフレファイターとして振舞うのはFRBの基本的な政策行為ですが、過去10年以上株価が下がると即追加緩和で下げを止める作業ばかりをしてきたFRBが、本当に株の下落を無視して資産縮小など開始できるのかどうかは大きな注目ポイントとなります。

ドイツ銀行のアナリストの予測では米国経済は2023年にはリセッション入りするとされており、インフレへの対応は極めて重要なものになることは間違いなさそうです。

しかしリーマンショック以降14年の歳月をかけても緩和に対する出口には迎えなかったという事実を考えると、ここからのFRBの動きはそんなに簡単な話ではなくなりそうで、政策を間違うと経済も金融市場も酷いダメージを受けるリスクが高まります。

米債金利上昇でドル円はさらに円安示現か

日米の中央銀行の政策方向はまったく真逆であり、ドル円はここからさらにドル高が進みそうですが、過去の民主党政権ではドル高円安を容認しない動きが何度も出ており、ここからどのタイミングでバイデン政権がけん制発言を繰り出してくるのかも大きな注目点となるでしょう。

2015年の場合、6月のG7サミットでオバマがドル高けん制したという報道が出てからしばらくして日銀黒田総裁も同様の発言をしており、やはり米国の意向が前提にあることがわかります。

ただ足もとではすでに米10年債利回りは2.5%を超え始めており、ここから円安を引き戻すのはかなりの努力が必要となるため、果たしてどのようにコントロールしていくのかにも関心が集まりそうです。

4月に入ってモラトリアム相場の雰囲気が漂いましたが、これを大きくぶち破るのはやはりFRBと日銀の政策決定ということになりそうで、引き継き注視していくことが必要です。