すでにこのコラムでは触れていますが、8月5日の雇用統計の結果を受けて相場は大きくまた動き出しそうな気配となっています。
雇用が市場の事前予想以上に好調に確保されていることでここのところ一気に高まったリセッション懸念が後退し、FRBはインフレ対策にまい進するであろうという市場観測が急激に高まったことで、週明け以降の相場は一旦調整色が強まったドル円も再度上昇軌道を回復させることが期待されはじめています。
7月のFOMC以降FRB高官はパウエル発言を打消し、年内から来年に向けてもとにかくインフレ対策に集中することを語っていますが、今回の雇用統計の結果はそれを裏付けるような内容になっていることから、9月に再度75ベーシスポイントの利上げが行われる市場期待も一気に高まりそうな状況です。

Data CME

実際CMEの利上げ確率もかなり高まりを見せており、現実味が出てきそうな雰囲気を醸しています。

ドル円と米債金利の相関性が回復し年内140円が再度視野に入ってきた

今年6月あたりまでは米10年債金利とドル円はかなりの正相関の関係を維持し、金利が上がればドル円もリニアに上昇する相場展開が続きました。

Data Tradingview

ただ7月以降は投機筋が日銀との対決色を強める動きから若干後退し、一旦JGBを買い戻す動きもでたことから米10年債の利率は低下傾向に陥り、リセッション懸念の高まりから直近では2.5%台にまで沈み込む展開となっていました。
しかし5日の雇用統計の結果を受けて再度上昇する可能性は極めて高く、3%を回復するような軌道に戻ることになればドル円も再度140円台を目指していくことが予想されます。
週明けはどこまで今年の年初来高値方向で値を回復できることになるのかに大きな注目が集まることになりそうです。

Data Tradingview

すでに先週末段階で135円台中盤まで値を回復しており、週内でどこまで回復できるのかに注目が集まります。
ちなみに8月10日には毎月懸案となっている7月のCPIが発表されますが、さらに年初来高値を更新するようなことになればドル円は大きく上昇し、多少下落してピークアウト感がでてもインフレがまだ継続することが示されれば米債金利の上昇要因にもなるので、この辺りも注目すべきだと言えるでしょう。

ユーロドルはまたどこかでパリティを下抜けさせる売りが出る可能性

年初来から下落が進み、7月にはとうとう20年以上ぶりにパリティを割り込んだユーロドルはその後大きくではないものの一定の買戻しが進み、FRBが今後も積極的に利上げし年内もしくは年明けに3.7%以上の水準まで利上げが継続することになれば、ユーロの対ドルとの政策上のコントラストは相当強いものになり、どこかで再度パリティ以下を目指す可能性ががではじめています。
ユーロ圏はドイツ経済が絶不調であり、さらに南欧諸国もかなり景気が落ち込み経済的リスクが高まっていることから、インフレが進んでも簡単に利上げが出来ないという複雑な事情を抱えているだけに、ECBの政策はFRBとはかなり差のあるものになるのは確実で、ユーロにもその影響が早晩出始めるものと思われます。
そのタイミングを正確に予測することは難しいものの、9月のFOMCに向けてリスクは各段に高まるでしょう。

Data Tradingview

残念ながら8月のシーズナルサイクルはほとんどワークしていないのが現状

例年のシーズナルなアノマリーだと日米の株価やドル円、豪ドルなどは8月に下げやすくなる傾向がありますが、すでに7月段階でこうした過去20年のシーズナルサイクルとは異なる動きが示現していることから、今年の8月はこうしたサイクルがリアルな相場には出ずに終わることも想定しておく必要がでてきています。
とくにドル円はこのまま大きく調整するかと思われましたが、結果的にはすでに135円台を回復しているため、シーズナルサイクルだけにこだわるのはかなり危険な状況です。
こうした情報はあくまで参考にしながら、リアルな相場をしっかり見続けて判断することが肝要です。

市場参加者が激減する週明け相場は不測の事態が発生することも想定してトレードを

8月第2週は本邦の輸出勢大手企業はほとんど夏休みの一週間で、ドル円の上の報にリーブオーダーが並ぶとしても東京タイムで積極的な動きがでることは期待できないのが現実です。
また、輸入勢は相場が下げれば買いを入れてくるものと思われますが、こちらも大きな動きは期待できず、投機筋のアルゴリズムと本邦個人投資家が対峙する動きが続きそうです。

週後半に向けては流動性も著しく低下することが予想されるところですが、なにか不測の事態が発生した場合には必要以上に相場が売込まれるといったことも十分に考えられますので、この時期ロングで勝負されようとする方は念のためにしっかりロスカットを予め設定されておくことを強くお勧めします。
この時期夏休みになる米国系の投機筋のマネージャーも休みの間に驚くほど相場が下落したという経験を少なからずもっているようで、休み前に一旦手仕舞いをするほど慎重な動きをとっているようです。
それぐらい予測不能なので、決して楽観しせずにまさかの時のことも十分に考えてトレードしていく必要がありそうです。