週開け12月15日の日本時間午前4時半にはいよいよ市場が注目する年内最後のFOMC政策決定が発表されますが、ブラックアウト期間でFOMCメンバーが発言をしなくなった中にあって市場はインフレの先行きを全くうまく読み込めないようで、米債金利が上昇しそうだと見れば株価が大きく下がりドル円は再上昇という落ち着きのない相場を延々と継続中です。
11月30日のFRBパウエル議長講演は特に新しい内容は入っていませんでしたが、なぜか楽観視した相場はNYダウを中心に猛烈な上昇を示現し、結局週開け2日にしてその上げをすべて打ち消す下落となって市場がインフレの先行きをうまく読み込めていないことが見えてくる状況です。
当然このような相場状況で利益を確実に獲得するのは相当難しく、プロから個人投資家まで翻弄されていることが示現しはじめています。
一方ドルはパウエル講演以降依然として弱含んではいますが、ドル円に関してはすでに先週末の安値から4円近い戻りを試しており、さすがに138円から上には簡単に戻らないもののそれなりの値幅を回復しています。
ラリーサマーズは米国のインフレ減速は短期的な反応の可能性を指摘
そんな中で米国クリントン政権下で財務長官を務めた経済学者のラリー・サマーズはブルームバーグのインタビューに答え、足もとのインフレ減速見通しで米債金利低下を金融市場が織り込み始めている状況に異議を唱えて注目されています。
11月に発表された月次CPIは市場の予想以上に急低下したことから市場は米債金利低下、ドル安、株高で反応することとなったのはご存じの通りですが、12月2日の雇用統計では平均時給の上昇率が前年同月比で5.1%に加速し、賃金インフレが抑止できていないことも明らかになっており、サマーズはインフレ減速は短期的な反応の可能性を改めて指摘している状況です。
また、米国の政策金利は日本時間15日早朝のFOMCで3.75%から4.25%まで引き上げられることが織り込まれていますが、サマーズ自身は6%ですらありうるシナリオで5%が金利動向のメインシナリオとは思えないと予測しています。
これまでFRBは常にインフレは一時的との説明をしてきていますが、瞬間的にせよインフレ率はすでに8%にまで上昇してきており、それにあわせて政策金利も上げざるを得なかった事情を考えれば5%で完全に打ち止めと予測するのは相当急であることを指摘しています。
FRBがこの予想のとおりにFOMCで政策決定するかはまだ全くわかりませんが、少なくともかなり楽観的なシナリオがこのまま現実のものになるとも思えない状況でその差が相場に現れる可能性は相当高くなりそうです。
世界最大のヘッジファンドブリッジウォーターはインフレ減速を予測できず大損に
世界最大のヘッジファンドのブリッジウォーターといえば今年創業者であったレイダリオが退任したことで話題を集めましたが、今年前半には米株の急落を見事的中させて大きな運用利益をあげたものの、この第四四半期には逆に13.2%の損失を出すことになったとブルームバーグが報じてこちらも大きな話題になっています。
今年前半についてはほとんどのファンドマネージャーは金利上昇と株安を予想していましたが、年の後半については見通しが分かれ、ブリッジウォーターはさらなる米債金利上昇を予想していたことから11月に入ってからの米債金利の低下と株価の戻りはこのたった1か月あまりで大きな損失を喫することとなってしまいました。
そして年前半32%ものリターンを獲得していたにも関らず11月末時点では6%にまで落ち込んでいるようで、一時的にせよ金利低下、株高、ドル安の流れが出たことを予測できなかったことが大きな損失を招くことになってしまったようです。
最終的な到達地点を当てられてもそこまでのプロセスが見通せないと儲からない
こうしたブリッジウォーターの運用状況を見ると、大筋の政策を当てることができてもそこまでのプロセスとして上げたり下げたりする部分を正確に読み込むことができないとプロの投資家でさえ結局利益を獲得できないことがわかります。
まして個人投資家の投資となればこの時期はかなり難しくなるのは当たり前で、為替相場ひとつとってみても無作為な上下動に耐え抜いて確実な利益を収めることは相当難しいということは予めしっかり認識しておきたい状況です。
12月のFOMCを通過すれば2月まで次の会合はないので相場は一定の落ち着きを取り戻す可能性は高まりますが、残念ながら先行きの不透明感はまだ続きそうで、ここからは日頃にも増して注意深いトレードが求められます。
年末に入って市場参加者は激減しはじめており今年の相場は終わりを迎えているように見えますが、流動性が低下する中で突然大きな動きがでることにも十分に備える必要がありそうです。
本格的な動きが相場に戻ってくるのはクリスマス明けということになりそうですが、年明けはその動きが大きく変化することも考えられ、油断のならない時間帯が続きます。