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一旦不安解消かと思われた米国ファーストリパブリック銀行が再度深刻な経営不安に見舞われ破綻に追い込まれようとしています。
複数の米メディアは、同行が近く米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれる見込みだと報じたことから28日のニューヨーク株式市場では株価が4割超も下落に陥っており、週ベースで見るとなんと約75%下落という危機的な状況に陥っています。

4月24日に発表の1~3月期の決算が期待外れだったことから銀行危機への市場の不安が再燃し、同行株からの資金流出が続いたことが大きな要因となっているようです。
それでも4月27日株価が小幅反発したことに加え、ホワイトナイトが現れて救済をしてくれるのではないかといった甘い期待が市場には広がりましたが実際にはそうしたことは全く示現せず、政権情報筋は28日CNNの取材に、ファーストリパブリック銀行を救済する新たな計画はないと述べ、政府介入への期待を打ち消したことから相場は大きく下落しドル円もそれにあわせるように133円割れぎりぎりのところまで値を下げる展開となっています。

米国メディアの報道ではFDIC、米連邦預金保険公社の管理下に収まるのではないかといった内容が相次ぎ、株価はさらに大きく下落することとなってしまいました。
年初来のチャートを見ると3月に危機が叫ばれた後4月に一旦切り返したもののその後はまた延々と下げを加速しており、全滅の香りも漂う悲惨な株価展開になっていることが改めて確認できます。

Data Tradingview

経営破たんは目前の状況に

この銀行は富裕層向けビジネスを手がけ、預金保険の保護上限(25万ドル)を超える額を預ける顧客が多いのが特徴ですが、それが逆に仇になり3月の米2銀行の破綻をきっかけに経営不安が浮上、預金を引き出す動きが加速する状況となりました。
この銀行もSVB同様、FRBの急激な利上げから保有債券の価格が下がり大きな含み損を抱えることになったのが経営不安を加速させることになっています。

ただ、一旦は落ち着いたかのように見えたこの銀行も、上述のように24日に発表された第一四半期の決算内容が明らかになると預金が3月末時点で1045億ドル(約14.2兆円)と3カ月前から約41%減っていたことが判明し、これが致命的なダメージを与えることになってしまいました。
マイケル・ロフラー最高経営責任者(CEO)は記者会見で預金の動きは3月末から安定していると述べ、動揺する株主を安心させようと努めましたが焼石の水のようで、ひとたび市場で危ないと噂されると本当に破綻するまで追い込まれる状況が顕在化することを改めて目の当りにすることとなりました。
とくにSVBから始まった銀行破綻リスクの顕在化では、噂がでてから預金者の資金移動等がネットを利用してあっという間に起きていることで株の売却も驚くほど進行してしまうため、20世紀初頭に見られたような銀行での取り付け騒ぎのような名物的風景が示現することなく、いきなり破綻に追いやられてしまうのが非常に顕著になっています。

噂が売りを加速するというのが唯一残された共通項のようで、危ないという話が市場に拡散すると本当に破綻の危機を迎えてしまうというのはかなり危険なプロセスということが分かります。
完全に破綻確定となれば逆に相場は落ち着くことになるのかも知れませんが、他行に飛び火するかどうかの疑心暗鬼は高まりそうで5月も金融市場は落ち着きのない動きが続くことが予想されます。

本邦の銀行に同じような問題は起こらないのか

ファーストリパブリック銀行は米国の地銀なのでいくら大騒ぎしても所詮他国の状況ということになりますが、米国の地銀は最も安全なはずの米債を購入して金利が上昇したことから額面が下がるという大きな問題に直面しています。
もちろん短期資金を長期国債で運用することは間違いですが、銀行が国債で資金を運用した結果大きな損失が生じるということを考えると、本邦の金融機関も決して笑えない状況にあることが見えてきます。

満期保有ということであまりはっきり決算に出してこない銀行が多いのが実情ですが、実は純資産を兆円単位で減らしたところも存在しており、この視点でみると国内の銀行も安泰とは決して言えない厳しい実情が浮かび上がります。
たとえばゆうちょ銀行は外債投資の失敗から2021年9月末に11兆4,800億円あった純資産が2022年12月末には9兆2,400億円まで減っており、農林中央金庫は2021年12月末から1年間で外債投資だけで純資産を2兆9,000億円近く減らしています。
ここに国内の国債投資でも多額の含み損を抱え純資産から差し引くことを余儀なくされるので、SVBやファーストリパブリック銀行などを笑っている場合ではないことがわかります。
90年代大手の銀行破綻を経験している日本では金融庁が盾になってそう簡単には破綻させない動きになりそうではありますが、メガバンクや地銀にヘッジ付きの外債つまり米国債購入をやんわり勧めたのも金融庁なので、本当に完全に信用できるのかには疑問の余地も残ります。