20日日銀の政策決定会合があり、基本的に政策変更なしというアナウンスがでましたが、その直後にこれまでイールドカーブコントロールにおける10年債長期金利の許容変動幅の上限を0.25%から0.5%程度に引き上げると発表したことから日経平均もドル円も大幅下落に追い込まれることとなりました。
とくに今回の政策決定会合は来年4月に退任を迎える黒田総裁のもとでは政策変更はまったくないと思われていただけに意表をつかれる形となっており、相場は大混乱に陥っています。
今回日銀は確かに政策金利を変更したわけではないので政策変更なしといえばそれまでですが、無制限買付オペの基本となってきた金利の上限を一気に0.25%も上昇させることになったのは、もはやイールドカーブコントロールができなくなったことを世界に知らしめる結果ともなっており、事実上のYCC政策の敗北宣言となったことはかなり大きな出来事として扱われそうな状況です。
市場ではすでに11月から10年債利回りが0.25%を超える動きになっており、どれだけ買入れをしてもそれを維持できない時間帯が長く続いたので事実上制御不能になったと市場にみられても仕方なく、ここから先の金利の動向が気になるところとなっています。
ドル円は直後に4円以上の下落でロンドン、NYタイムにさらに売られる可能性も
20日の東京タイム正午には137円台中盤で日銀の政策決定会合後の内容待ちをしていたドル円は、YCCの上限が0.25から0.5になったとの発表を受けて急落、一旦133円割れ寸前まで4.4円程度の下落となっていますが、欧州時間帯になればさらに下落することも考えられるだけに迂闊なレベル感での買い向かいは禁物の状況になっています。
多くの海外投機筋は日銀がこれ以上0.25%のレベルでイールドカーブコントロールを続けることは無理であると見込んでいただけに、今回の決定はまさに渡りに船の状況で、ここからどれだけ債券を売込みドル円も並行して売りこんでくるのかに大きな注目が集まります。
年末市場参加者が激減する場の薄い相場状況でさらに売込まれることになれば、相当な損切を巻き込んで120円台にまで下落するというまさかの展開になることも考えられるだけに慎重な取引が求められます。
日経平均の下落もかなり深刻なものに
日経平均はこの決定が報じられてからやはり急落し、一瞬2万6000円割れ寸前まで売込まれましたが下値ではそれなりの買いが入り2万6500円水準まで値を戻しています。
ただこの先はやはり良くわからないというのが正直なところで、年末に向けてさらに値を切り下げる動きになるリスクも残るところです。
すでに2万7000円割れは200日移動平均線を大きく割り込む水準となり、年内さらに下落することも覚悟せざるを得ないところにさしかかっています。
日銀は10年債を0.5%で指値オペと市場に通知
日銀の今回の発表を受けて既に長期金利は一時0.455%に急上昇し0.5%を超えそうな勢いになってきていますが、日銀は20日午後、10年債を0.5%で無制限に買い入れる指し値オペ(公開市場操作)を実施すると市場参加者に通知してきており、ここからは0.5%の攻防戦が繰り広げららることになります。
ただ、市場参加者、特に売り仕掛けのヘッジファンドなどは一旦日銀は0.25%を死守できなくなったという事実を目の当たりにしてきているので、さらに売りこんでくるであろうことは容易に想像でき、金利をめぐっての市場と日銀の戦いはより激しくなりそうです。
また既発債の内すでに5割を超えた日銀の持ち国債は価格が下落、金利上昇という非常にクリティカルな状況に直面するため、含み損がさらに大きくなることは避けられず事実上の債務超過を心配する必要もでてきそうな状況となっています。
市場は黒田総裁退任まではなんの変更も行われないと見ていただけに、なぜこのタイミングにこうした変更に打って出たのかを詮索することになりそうですが、後任の日銀総裁がいきなり緩和の縮小を持ち出すよりは黒田総裁の任期中にそうした動きを匂わせるほうが得策と考えた可能性はあります。
真意が明らかにされることはないと思いますが、様々な損得勘定があっての決定だったことが窺われるところです。
こうなると本家本元の政策金利自体をいつ上げることになるのかについても市場の関心は高まりそうで、これまでほとんどノーマークだった日銀の政策決定会合はFOMC並に注目を集めるイベントとなるでしょう。