3月最大のイベントと目されていた米国のFOMCを無事通過した相場ですが、その間イエレン財務長官の発言がきっかけで市場はリスクオフに陥りました。
さらに週末ドイツ銀行の株価が一時的に15%も下落するという事態が起きたことからクレディスイスの次はドイツ銀行かといった疑心暗鬼が市場に顕在化することとなり、相場はリスクオフを引きずる形で週明け3月最終週を迎えることになります。
例年3月末は海外勢の四半期末に加え、本邦勢の年度末にも当たることから特別な相場の動きがでがちですが、今年の3月末はそういう動きが示現することになるのかにも注目が集まります。
イエレン発言で相場は相当な疑心暗鬼に
イエレン財務長官はSVB破綻後市場の不安を落ち着かせると言う意味で全米銀行の預金を保険適用で全額保証することを考えるといった旨の発言を行ったことから、市場にくすぶっていた不安な空気が一気に解消し米株は大きく値を戻すこととなりました。
しかし日本時間で23日の早朝、裏でFOMCのパウエル記者会見が行われている真っ最中に議会証言において、一転してすべての預金を保護することはないと前言撤回発言をしたことから相場はFOMCの結果よりもイエレン発言に注目することとなり、後場の終了直前に大幅下落してしまいます。
結果的にはパウエル発言よりもイエレン発言に市場が大きく反応することとなり、FRBの利上げ政策の話はかなり影の薄いものになってしまいました。
ただその後もイエレンはリスクの高い銀行については保証を考えるといったことも口にしはじめており、事実上何を言っているのかわからないという状況を示現する結果となってしまっています。
SNSやメディアでも叩かれ始めているだけにここからの対応が注視されますが、銀行預金の保護を巡りパウエル議長とイエレン財務長官がそれぞれ相反する趣旨の発言を行っていると市場が判断しているのも大きな問題で、米国政府としてどう整合性をつけていくのか注目が集まります。
挙句の果てにドイツ銀行株価大幅下落で再度リスクオフ点灯状態に
クレディスイスのような巨大金融機関が経営危機となり買収劇が短時間に進んだことを考えると、次にほかの金融機関に同様の問題が起きるのではないかという疑心暗鬼の状況が広がるのは仕方ないことではありますが、24日の欧州株式市場で銀行株が急落し、とくにドイツ銀行の株価が一時14.5%安にまで下落したことから急激に破綻懸念が高まることとなり、市場を騒然とさせることになりました。
ドイツのショルツ首相は24日、ドイツ銀行に関して「懸念すべき理由はなにもない」「非常に収益力のある銀行だ」と発言し、EU各国の首脳も欧州の銀行システムは「力強い資本と流動性があり強じんだ」との共同声明を発表したことから一定の持ち直しをはかって週の取引を終えていますが、2008年のサブプライムローン問題のときにも同様に要人が大丈夫だと言ったそばから大丈夫ではなかったことがあるだけに、金融機関の破たんリスクに対する市場の疑心暗鬼はまだまだ続きそうな状況です。
ドル円は本邦年度末ながら例年のアノマリーを崩して円高方向に進むか
例年3月年度末は実需の動きや金融機関のリバランスの問題なども手伝い最終週ドル円はドル高に動きやすくなるものですが、今年に関してはそうならない可能性があり、断定してトレードするようなことがないようにそれなりの注意を払うことが必要になってきているようです。
昨年のドル高円安相場でも3月最終週は大きくドル高に動いたことは記憶に新しいところですが、今年は市場のリスクオフ感の方が実需の動きに勝っているようで今年に関しては例年のアノマリー通りの月末ドル高にならないことも覚悟しておかなくてはならないようです。
主要国の金融政策から金融機関の破綻リスクに関心が集まる相場にシフト
米国でシリコンバレー銀行が破綻するまでは金融機関の破綻リスクの問題は全く市場のテーマではなかったのですが、それに次ぐ形でクレディスイスの経営難からUBSが買収を行うといったことが急転直下進行したことにより、市場はこのリスクを拭えないまま年度末・四半期末を迎えようとしています。
この状況が完全に払拭されるまでにはまだかなりの時間がかかりそうで、その間に第二第三の大手の破綻劇が顕在化した場合相場状況は全く予想外の展開にシフトすることも想定しておかなくてはなりません。
もしドイツ銀行に具体的になにかあれば今度はFRBや米国財務省の問題ではなくなってECBの管轄事項になるため、ラガルド総裁のもとで適切な対応がとれるのかにも不安が募るところです。
金融市場の一寸先は闇であることを改めて感じさせられる月末の一週間になりそうな気配です。