先週の為替市場は立て続けにFOMC、ECB理事会、日銀政策決定会合の政策決定が行われたことから、相場は想像以上に荒れた展開となりました。
トップバッターであったFOMCでは市場の予想どおり0.25%の利上げが実施されましたが、9月以降については経済指標を見ながら会合ごとに決定していくとパウエル議長が発言したことから継続した利上げに対する警戒感は後退し、ドル円は売られる展開になりました。
しかしその晩のECB理事会では利上げこそ実施されたものの欧州圏の景気の先行き不安があることをラガルド総裁が口にしたことから、一転してユーロが売られドル円は再度141円台に上昇する動きとなりました。

ここまででも相当な上下動となりましたが、この中銀ウイークで最大に相場をかき回すことになったのは日銀でした。
28日の午前2時過ぎ誰も予想していなかった時間帯に突然日経新聞電子版のリーク記事がでて、日銀は政策変更はしないがYCCの上限を引き上げる見込みといった内容がドル円相場を大きく引き下げることになり、日銀会合の政策発表前に東京タイムの早い時間138円台にまで下落したドル円はその後の発表で3円幅の上下動を2往復近く繰り返すというすさまじいい展開となりました。
日経のリーク報道はほぼ正しく、日銀自らリークすることで政策決定の前にある程度相場がそれを折り込むことを期待したものと思われます。
ただ日銀が実際に発表した内容は非常に理解しにくく、緩和は続けるがYCCの上限は0.5%が望ましく、1%までは許容するとして単純にYCC枠を引き上げるとしなかったことから相場はその真意を理解するのに大混乱をきたす結果となりました。
変更なしで一141円台まで吹き上げた相場はYCC上限1%まで許容という内容を受けて反転下落、軽々と3円近いドル安円高を示現したあと、徐々に戻りを試す形となりました。
さらにNYタイムに発表された経済指標が良好であったことが後押しする形でドル円はまさかの141円台にまで回復し、高値で週の取引を終えるという驚きの展開を見ることになりました。

さすがに市場参加者の多くがこの大混乱相場に飲み込まれ売っても買ってもやられ往復ビンタを食らってしまった方も多かったようで、想像以上に傷んだ相場状況になってしまったようです。
この激しい上下動は市場が日銀の政策決定をしっかり折り込むことが出来なかった証拠となったようで、改めてその問題の大きさを感じさせられる展開になっています。

ドル円先週一週間の動き

週明けはいよいよ8月相場を迎える事になりますが、果たして大揺れ相場を早期に消化して明確な方向感が現れる相場になるのかどうかに大きな注目が集まります。

ドル円は引き続き上昇軌道に戻るという見方も

ドル円28日政策決定会合当日の動き

多くのアナリストは週明け日本株は日銀の政策を受けて引き続き下落、またドル円は一定程度円高方向に下落していくと見ているようですが、実際のドル円はすでに日銀会合の結果を消化して141円台にまで値を戻していることから、ここからもさらに上方向を目指す可能性もではじめています。
さすがに先週金曜日混乱の挙句の果てのNYタイムのドル円大幅上昇は違和感たっぷりで、ここから再度円高方向に動くかどうかはリアルな相場をチェックしていく以外にはないというのが正直なところで、テクニカル分析にもかなりの無力感を感じさせられる時間帯に入って来ていることを感じます。

8月相場になると目に見えて市場参加者が少なくなるいわゆる夏枯れ相場に突入しますが、逆に参加者が少ないことからちょっとした材料でも相場が大きく動く危険性も高まることになるため引き続き注意が必要です。
また、日本株とドル円はこの時期下落しやすい期間に入るので本当に上昇軌道を回復できるのかについてはチャートを確認しながらトレードするしか方法がないのが実情です。

火曜日以降は米7月ISM製造業景況指数、米7月ISM非製造業景況指数、米6月JOLTS求人件数、米7月ADP雇用統計、米7月チャレンジャー人員削減数、米7月雇用統計と経済指標が立て続けに発表となるのでそれを受けたそれなりの動意もありそうですが、少なくとも下げ渋り、ヨコ展開あたりに落ち着く可能性がありそうです。
日銀がYCCの運用を弄ったことで円金利は間違いなく上昇することになりますが、それ以上に米国FRBは既に5%台中盤の政策金利に達する利上げを実現しているので、政策金利を上げることを決定までは円が大きく買われる状況にはならないことも視野にいれておきたい状況です。

ユーロドルも下落傾向の相場に注意が必要

ECB理事会で追加利上げが見込まれていた段階まではユーロドルも強含みの展開となりましたが、ECBは次回以降の利上げは示唆しておらず、ラガルドECB総裁からも景気の悪化を危惧してハト派的な発言が増えることになれば一段のユーロ安となる危険性が高まるところです。
基本的には1.0850-1.1150あたりの水準で推移することが予想されますが、ユーロ圏4-6月期GDP速報値と、ユーロ圏7月HICP速報値が市場予測を下まわる結果になるとさらに下落方向に動くことも意識しておきたい状況です。

ユーロドル一週間の動き

先週相場は上述のように想像以上に相当痛んでしまったようで、週明けもいきなり大きな動意のある相場を期待するのは難しそうですが、それでも主力の通貨ペアが上昇軌道に入るのか下落に転じることになるのかについての市場の関心は相当高くなりそうなので、事実をしっかり確認したうえで手堅いエントリーをしていくことが重要な一週間になりそうです。